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あからさまにここまで喧嘩売るなんておかしくね? あんな貧弱なやつがここまでするとは思わない。俺ならおとなしくROMってる。 ↑ 精神病だからしゃーない 精神病はこじつけじゃね? もし精神病だったら温かい目で傍観すればいいだけど 今編集履歴確認したけどipまでは管理人しか確認できないからなんとも言えないね もしかしたら王朝はすでにどっかいってて、別のやつがなりすまししてることも考えられる 結局の所ipがわからないから確認できずじまい ↑ わあ、お前王朝か? いや違うけど? てかもうこのwiki離れたほうがいいかな 喧嘩とかになったら嫌だし
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「ひいふうみい……補給部隊の護衛と言うにはルタンド8機は豪華過ぎだな」 大尉は呆れたように呟く。 ルタンドは第二次汎地球圏大戦(メイサア攻防戦)後に正式採用された統一地球圏連合の新鋭主力モビルスーツだ。 連合のウインダムやダガー、ザフトのザクなどに代わっていまや世界の主要各国はどこもこのルタンドを採用している。 もっとも東ユーラシア共和国の様に貧しい国は、第一線から退いた払い下げのザクやダガーを使っているのが通例だったのだが。 《予想通り、我々を誘き出す算段だという事でしょうね》 中尉は既に狙撃ポイントに着座していた。 スコープの調整に細心の注意を払いながらも、大尉にはしっかり返答する。 《にしても、順序が逆だろ?シンの奴。アイツが先に見つかってどーすんだよ》 少尉は相変わらずの口調でぼやく。 それは大尉も言いたい所だが、それとなく少尉を諭す。 「アイツは、なんだかんだで俺達に気を使ってるのさ」 《そりゃ、解らなくも無いッスけどね。あんなガキに気を使われるいわれは無いですよ?》 《……彼は、良い青年だという事ですよ》 中尉がまとめる。だが、その言い分は何処か哀愁がある。シンという青年が時折見せる、悲しみを超えた激情。それを何となく感じるからだろうか。 ともあれ―― 「先陣をアイツに取られるわけにもいかん。少尉、派手に行くぞ!」 《アイサー!派手にってんなら、お任せ!》 《了解。せいぜいこちらにも注意を引きつけます》 中尉のシグナスが持つスナイパーライフルが火を噴き、それに併せるように大尉、少尉がビーム突撃銃を乱射しながらルタンド部隊に肉薄していく。あっという間に砂塵は嵐となり、乱戦に突入した。 「隊長!さらに後方より別のモビルスーツ隊が出現!機数2!前方の敵モビルスーツも更に加速!前面に回り込まれます!」 次々にもたらされる部下の報告に、歴戦の指揮官は内心ほそく笑む 悲鳴のような士官の声を聞きながら、ガドルは悠然としていた。 「よし!モビルスーツ隊を二手に分けろ!前衛に2機、後衛に6機だ!”仕掛け”はどうなっている?」 ガドルは隣に座る副官に尋ねる。 「既に準備完了です。あとは合図を待つばかりです」 「良し。ベストな答えだ」 ガドルは満足そうに頷くと、トレーラー内に据え付けられた通信マイクを取り部隊全員にこう告げた。 「これより本隊は作戦通りテログループと交戦を開始する。各員は作戦通りの行動を行え。繰り返す、各員は……」 アナウンスをしながらガドルは思う。 (今は、まだ手を打つ時では無い) ガドルは腕組みをしながら待っていた。 これまでの情報を分析したところ、相手のモビルスーツ部隊は相当な訓練を積んだつわものだ。 数では勝っているが、とても一筋縄でいく相手では無い。 (結局、人身御供が必要と言うわけか) それはガドルが望むと望まざるに関わらず訪れる結末だろう。 だが指揮官が私情を挟む事以上の愚策は無い。 ガドルは静かに待っていた。 前面のモビルスーツ、ダストがこの補給部隊を、自分の乗るトレーラーを襲う瞬間を。 《シン、大尉達が敵の殆どを引きつけてくれている。お前が相手をするのは2機だけで良さそうだな》 「そうかい、じゃあ期待に応える為にも一瞬で終わらせてやるよ!」 シンはルタンドに向かうと見せかけて、いきなりダストを補給部隊の方向へ方向転換させた。 意表を突かれたルタンドは、つい反応が遅れる。 「うおおおおっ!」 身体にかかるGをねじ伏せるかのように、シンが吠える。 ルタンド達のビームライフルが火を噴くが、狙いが甘くダストの動きに付いて行く事が出来ない。 「ライフルを撃つまでもない!」 一気に間合いを詰めたダストはすれ違い様に、対艦刀でルタンドの胴を薙いだ。 ダストが通り過ぎた後、上半身と下半身が地に落ちて爆散する。 シンは追いすがるもう1機のルタンドを確認すると、ダストを跳躍させた。 反転した勢いのままダストは、ルタンドの頭部を蹴り砕く。 ルタンドは派手に転倒し動かなくなった。 その勢いを殺さないように反転したシンは、逃げ惑うトレーラー部隊を追い抜き、前面に陣取る。 《命まで取るつもりは無い。死にたくなければさっさと積み荷を置いていけ!》 右手にビームライフル、左手に対鑑刀を構え、威嚇する。 トレーラーから士官達が慌てて降りて、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。 「作戦成功、楽勝だな」 シンは張りつめた気が緩んでいくのを感じた。 ――それすら敵の作戦の内と気付かずに。 二機のルタンドを倒したダストがこちらに向かってくる。 車列中央のトレーラーに乗るガドルからもそれは見えた。 「ガンダム、か……」 ガドルは苦々しく呟く。 (テロリストが、小賢しい真似をするものだ) 『ガンダム』。 その名は、このCEでも特別な名前となりつつあった。 ”軍神”キラ=ヤマトが数々の伝説を築いた機体として。 そして世界の覇者、オーブの守る尖兵として。 その特徴のあるツインアイに二本角という顔を持つモビルスーツの総称を、いつしかマスコミは『ガンダム』と呼び、それはひとつの伝説になりつつあった。 勝者の伝説として。 (時代が変わる時、ガンダムは現れる。このモビルスーツもそうだというのか?) 平和の守護者、戦争を終結させうる者。 英雄を呼ぶモビルスーツ。 どれもこれも、マスメディアの作り上げた与太話。 だが、やはり軍人の間でもその存在感は無視出来ないのだ。 子供の好みそうな話。そんな話に大人が付き合う謂われは無い。 「下らん」 ダストがますます近づいてくる。 上半身を褐色に染めた18mの鉄の巨人は、もうこのトレーラーともう目と鼻の先に来ていた。 隣でおろおろしている副官にガドルはこう告げた。 「どうした、シュタインベル。貴官も逃げろ」 「しかし隊長!隊長はどうするのですか!?」 「私の事は良い。……行け」 なおも食い下がる副官を、ガドルは無理矢理トレーラーから降ろす。 副官は暫く迷ったが、歩み寄るモビルスーツの巨体を見て、慌てて逃げ出した。 悠然と歩いてくるダストの姿ににガドルは失笑を禁じ得ない。 「世界を救うのがガンダムで、世界を変えるのもガンダム?ふざけた話だ」 ダストは尚も近づいてくる。 ガドルの望み通り。 「貴様が”ガンダム”だと言うのなら……証明して見せろ!!」 ガドルがトレーラーのコンソールに、何事か操作を走らせる。 その瞬間、白煙が周囲を一気に覆った。 その白い煙は、歩兵部隊を率いていたコニールからも確認出来た。 一台だけではない。 全てのトレーラーから白煙が吹き出ていた。 各トレーラーの車体下部から噴出した白煙は瞬く間に戦場一帯を覆う。 「爆発?」 しかし、それにしては火の気がない。 その瞬間、違和感の正体に気付く。 「まさか……対モビルスーツ用スモークディスチャージャー!?」 慌ててコニールは双眼鏡を覗く。 そして、コニールはそこで信じられない光景を目撃した。 ――ビームの火線がダストを貫いていたのだ。 「くそおっ!!」 突如ビームライフルが真っ二つに切り裂かれた。 ビームサーベルだ。 コンマ秒反応が遅ければ、恐らく腕ごと持っていかれただろう。 トレーラーからスモークが発生した次の瞬間、その中からモビルスーツがビームサーベルを振るったのだ。 ――潜んでいたモビルスーツの名は『マサムネ』。 先日戦ったあの可変モビルスーツである。 マサムネはトレーラーのコンテナから勇躍飛び出すと、大上段に一気に切りかかった。 シンはダストのパワーを全開にして必死でサーベルの斬撃から逃れようとしたが、敵の方が早い。 火花が飛ぶ。 肩口にサーベルを突き立てられ、更にそこから押し込まれようとしている。 「クソ!」 機体が重い。 このままではマサムネのパワーに潰される。 そう判断したシンは身軽になるため、やむなく対艦刀シュペントゲーベルを手放した。 巨大な刀が左手から離れ、大地に落ちる。 《マサムネを格納していたのか。近づいてくる瞬間を狙っての奇襲とは、器用なものだ》 「感心してる場合か!」 今、ダストの手には武器は無かった。 「クッ……!」 《シン、後ろだ!》 レイが珍しく叫ぶ。 シンがそちらを見ると、いつの間にかもう一機マサムネが現れていた。 別の車両にも仕込まれていたのだろう。 見事な偽装だった。 「罠!?」 後から来たマサムネはビームライフルの銃口をダストに向ける。 (させるかよ!) 考えるよりも先に、体が動いた。 頭部バルカンをマサムネの頭部目掛けて乱射する。 マサムネがカメラへの被弾を避けるために一瞬退いたその隙に、背部フライトユニットを展開。 一気にブーストを最大出力で吹かせた。 「ぐっ!」 滅茶苦茶なGがシンを襲う。 ダストは体勢を後ろに傾けたままブーストをしたので、仰け反りながら飛んでいく。 なんとか機体を立て直そうするが最初のマサムネが肉薄しており、なかなか立て直すことが出来ない。 「しつこいっ!」 シンはマサムネをバルカンでさらに牽制しながら、地面と水平に背面飛行するダストをスラスターを吹かし強引に横回転させる。 マサムネがビームサーベルを振るう。 しかしダストは間一髪その一撃を避け、逆に回し蹴りを喰らわす。 思わぬ逆襲を受けたマサムネはそのままあらぬ方向に吹っ飛んで行った。 蹴りを支点にして方向を変えたダストはブーストを吹かし、相手の攻撃範囲から逃れる。 だが攻撃から逃れ着地しようとした刹那、そのタイミングを狙ってビームライフルが撃ち込まれた。 「!?」 もう一機のマサムネだ。 このままでは手放した対艦刀を拾う事すらままならない。 どうにかダストは着地すると、何とか横っ飛びに避け続ける。 《正確な狙撃だ。ブースト光を見て射撃しているのだろうが、いい腕をしている》 「さっきから敵を褒め過ぎだぞ!どっちの味方だ!」 冷静なレイも、こうなると鬱陶しいだけである。 今更ながらシンは実感していた。 プラントがオーブに併合された今、シンが在籍していたザフト軍の出身の者も多数、統一連合側に回っているだろう。 マサムネのパイロットが何者かは分からない。 だが眼前の敵は、前の大戦で戦った連合兵とは格段に腕が違っていた。 恐らくはコーディネイター。 こうして敵に回ればかくも驚異的な存在だとは、戦慄すら覚える。 唇が乾く。 今更ながら震えとも歓喜ともつかない感情が沸く。 シンは、この状況を切り抜けるため必死に考えを巡らせていた。 白煙の中でビームの残光が閃く。 その瞬間ダストに襲い掛かる2機のマサムネ。 その様子は大尉達にも目撃されていた。 大尉達は4機目のルタンドを倒した所だった。 残りも時間の問題だろう。 しかし…… 「くそぉ!これじゃあシンの支援に行けねぇ!!」 少尉の怒声が耳に付く。 「落ち着け!まず一つずつ倒せ!でなきゃ何時まで経っても終わらん!」 大尉も怒鳴り返す。 焦っているのは誰もが同じだ。 ルタンドの左腕が遠距離からの狙撃に打ち抜かれ、爆発する。 中尉の射撃は正確だ。 だが、こういった乱戦に於いては、その難易度は跳ね上がる。 如何に中尉といえど、一撃必殺はそうそう取れはしない。 ましてやスモークの中に支援砲撃など満足に出来るわけが無い。 「上手くいかないものですね……!」 弾を再装てんし、敵を狙う。 味方の血路を切り開くために。 「ちっくしょぉー!!」 少尉がビーム突撃銃を連射するが、ルタンドのシールドに阻まれなかなか有効打にならない。 ルタンド隊は時間稼ぎに徹しているのか消極的で、中々攻め崩す事が出来ない。 それは大尉も同じである。 二人の焦りは募るばかりだった。 シンも又、焦っていた。 なにせ遮蔽物など殆ど無い上に、二対一で基本性能は向こうが上。 挙げ句の果てにシンの手持ち武器は今やビームサーベル一本、頭部バルカン、両腕に仕込まれたスレイヤーウィップのみ。 射撃戦に対応出来るような武器は残されていないのだ。 《いささか乱暴だが、とにかく乱戦にして相手の射撃を封じなければならんだろう》 ビームサーベルを抜刀。 シンはもう一機に撃たせないように、ひたすら前衛のマサムネと切り結ぶ。 「おおおっ!」 裂帛の気合いを込め斬りかかるが、あっさりと受けられ、距離を取られる。 そこに、シンは追いすがり更に切り結ぶ。 何せ相手と離れてしまえば、またビームライフルの斉射が来るのだ。 《シン、急げ。スモークが消えたらこちらはじり貧だ》 「解ってる!」 そう。 今ビームライフルが来ないのは単に同士討ちを恐れての事だ。 この距離では視界が晴れてしまえば間合いを詰めるアドバンテージは消えてしまうだろう。 皮肉な事に、今はスモークがシンを守っていた。 「ち……キツイな」 さすがのシンも弱気にもなる。 《何を言っている。こんな所で死ぬのが、お前の目的だったのか?》 「まさか……っと!」 今度は相手が斬りかかってくる。踏ん張り、シールドで受け流すダスト。 《では諦めるという事か?ならば、今すぐ武器を置いて降伏しろ。お前は何としても生き延びなければならない。違うか?》 相棒はいつも強気だ。どんな時でも。 (俺は何で、いつも……) ――こうなってしまうのだろう。 何時も自分は、自分の置かれた状況を何とかしようと思っていた。 マユを失い、怒りと共に”世界を守るために””第二、第三のマユ=アスカを生み出さない為に”ザフトに入隊した。 だがその結果ザフトは世界の敵となり、シンは迷走の末に更なる地獄に行き着いた。 (何時も俺は、誰かを、何かを守ろうとしているのに!) ――悲痛なまでの決意。シンという青年は、何時もそればかり考えていた。 しかしその結果は何時も最悪の形で裏切られてきた。 しかもそれは”守ろうとしていた人達が、何時も自分の身代わりの様に死んでいった”という形だった。 ――俺が死ぬべきだったのか。 いつも悔恨のみが残る。 怒りの炎。 それは、己への悔恨。 罪業を背負い、尚も許せぬ自分を鍛え、燃やし尽くす黒き炎。 憎しみと、怒り――何よりも、優しく悲しい炎。 (マユ、ステラ、ルナ……俺は、君達を殺してしまっても……死なせてしまっても、生きる価値がある程の人間だっていうのか?) それは、決して尽きぬ疑問。 それこそが、今のシンを生かしている原動力だと知りもせずに。 何時か、それは解る時が来るのだろうか。 自分が何故生まれ、生きていくのか。 それは決して解き明かせる日の来ない、永遠の問いかけだと気付きつつも。 だが――今は、今はまだ。 「諦める?諦めるだって!?俺が!?」 その言葉が――思いが炎を燃え上がらせる。 何かが、シンの中で蠢く。 心にぽっかりと開いた穴が呼び寄せた魔獣。 それが今正にシンを突き動かしていく――生きるために。 「良いだろう。諦めてやるさ!」 《シン!?》 シンは自らシールドを捨て、ダストを引かせる。 《何を考えている!?狙撃されるぞ!?》 「諦めてやる……諦めてやるさ!ただし、俺が諦めるのは”死ぬ事”だ!!」 こんな地獄の様な世界で、怨嗟を常に聞き続け、それでも憎しみを捨てないで。 己を厭い、嫌い、恨み。その果てにある世界に幸せなど有るものか。 有る訳が無いと知りながら。 今、シンの体は熱く燃え上がっていた。しかし、心は凍てつく様に冷たい。 世界の全てが緩やかに流れていくような、意識がクリアになる感覚。 その境地は、かつてシンも体験していた。 狂える戦士が辿り着く、怨嗟の果ての境地。その名は―― 次の瞬間、その場に居た誰もが目を疑った。 ダストが己の持つビームサーベルを天空に向かって放り投げたのだ。 今正にビームライフルを撃とうとした者も、ついさっきまでダストと切り結んでいた者も、天空に舞うビームサーベルから目が離せなかった。 ――何故? それは、当然の疑問。 降伏するつもりもないのに唯一の武器を捨てる人間など、居るはずがないからだ。 だが、ダストは――シンは捨てた。何故か。 誰もが天空に舞い上げられたサーベルに見入ったほんの一瞬――その隙をシンは、ダストは逃さなかった。 ブーストを使わないただの跳躍だったが、意表を突かれたビームサーベル所持のマサムネは一気に懐に飛び込まれる。 マサムネのパイロットは一瞬虚を突かれるも、「自棄になったのか」と笑った。 素手と剣、負ける方がおかしいのだから。 だがシンの動きは相手の予想を超えていた。 ダストの左腕が動き、そこから何かが伸びる。 ビームサーベルの間合いより遠く、速く。 マサムネのビームサーベルを持った手をワイヤー絡め取った。 そして、ワイヤーは一瞬激しく瞬く。 グフイグナイテッドと同じ武器、スレイヤーウィップだ。 「こいつっ!これを狙って!?」 コクピットにまで被害は及ばなかったものの腕部の電気系統がショートし、使い物にならなくなる。 しかし今のシンの狙いはそれでは無かった。 ワイヤーを巻きつけたまま飛び上がるダスト。 (正気か!?) ブーストなど使えば、もう1機のマサムネが完璧に狙撃する。それは、確実な事のはずだ。だが……。 ビームの光条が走る。 だが、それはダストなど存在しない明後日の空間。 その時になって、マサムネのパイロットはシンの狙いを理解した。 右腕に絡み付いたスレイヤーウィップ。それを支点とし、ダストは異常な旋回を見せていた。 狙撃手が予測する空間を超える軌道――それをシンはスレイヤーウィップを使って生み出していた。 軽量機とはいえマサムネはダストより重いが、ダストのフルブーストの勢いに抗しきれず引き摺り倒される。 左腕のスレイヤーウィップを切断して仰向けのまま狙撃してきたマサムネに接近する。 ダストは弧を描いた軌道のまま突き進み、地面すれすれをフルブーストするために仰向けのまま飛んで行っているのだ。 あまりの予想外の動きに、狙撃も想定していた精度では撃てない。 ダストの両手にはいつの間にかアーマーシュナイダーが握られていた。 最後のビームライフルをまたも横旋回して避け、ダストはマサムネに肉薄する。 狙い違わず、一方のナイフはビームライフルごと腕を破壊し、もう一方は頭ごと胴体部を切り裂いた。 そしてダストは宙返りの要領で回転し、その動きのまま蹴りを相手の胴体に見舞う。 胴体部に残された対モビルスーツ用ナイフ――、アーマーシュナイダーが更にマサムネの胴体部に押し込まれ、それはコクピットにも達した。 吹き飛んだマサムネは一拍置いて爆散する。 ダストは一回転し、無事に着地した。 「ば、馬鹿な!」 もう一機の、先刻までダストと切り結んでいたマサムネのパイロットは戦慄する。 有り得ない。 何もかもが有り得ない。 こいつは、一体何なのか。 だが、ダストは未だ着地の姿勢から動いては居ない。 駆動系が故障したのかもしれない。 とにかく、マサムネにとっては最大のチャンスだった。 マサムネのパイロットがライフルを取り出し構えようとした時…… いつの間にかダストの右腕には対鑑刀、シュベルトゲベールが握られていた。 スレイヤーウィップで巻き取っていたのだ。 ダストのツインカメラが輝く。 まるで全てを解き放たれた獣がその咆哮を内に秘め、研ぎ澄まされた牙を相手に叩き込むかのように。 ――次の瞬間マサムネは真っ二つになり、爆散した。 大尉達がようやくルタンド部隊を撃破し、応援に来た頃には全て終わっていた。 全身傷だらけではあるものの健在なダストの姿を確認した三人は安堵する。 《なんだぁ?俺たちの分まで取っちまったのかよ》 《伏兵がいたようですね。遅れて申し訳ない》 《ま、無事で何よりだ》 通信機から聞える声は、三者三様のあんまりな言い様。 しかしその裏に潜む仲間の無事に心から安堵する気持ちが見えていた。 死にかけたがシンは怒る気にはなれなかった。 ガドルは驚いてはいなかった。 (全ては、こうなる運命だった。それだけだ) 補給部隊は壊滅した。 そしてそれと引き換えにリヴァイブのモビルスーツ隊を倒すはずだった切り札のマサムネ隊も。 破損したドレーラーから何とか這い出たガドルは、呆然と結末を見続けていた。 共に来た補給部隊のトラックやトレーラーだけでなく、護衛のモビルスーツも全て破壊されていた。 全てが地に伏し真っ黒な煙を噴き出して、炎上している。 破壊の狭間を、ふらふらと当てもなく歩いていくと、一人の青年の遺体を見つけた。 見覚えがある。シュタインベルだ。 破片にでも当たったのだろうか、頭から血を流して事切れていた。 (なんて事だ……) ガドルは愕然と膝を落とした。 この作戦が司令部から下された時、ガドルは引き受ける代わりに条件を出した。 あたら部下をそのような囮に使うべきでは無い。可能な限り最小限の人員で作戦遂行を。出来る事なら自分ひとりでも、――と。 しかしガドルの思いとは裏腹に上はそれをあっさりと却下し、相当数の人員を回してきた。 ガリウス司令は言う。 治安警察との関係上、今回の作戦は失敗するわけにはいかんのだよ――と。 部下の命より組織の面子が大事なのか。 シュタインベルの遺体を見下ろしながら、ガドルは嘆息した。 (……癒着、か。今までは必要悪だと思っていたが、これこそが世界を歪めていくものだと思えてならん) 軍人として、上からの命令は絶対だが、彼はせめて彼の権限で部下の命だけは救いたかった。 意味もなく死ぬ事など無いと、思っていたからだ。 だからシュタインベルに逃げろと言った。 ――だが。 「なんと情けない事だ。私は、私自身が軍規を乱した事が、許せずにおるとは」 それは、言葉の通りの意味では無いのかもしれない。 もし敵前逃亡などさせなければ、シュタインベルは今頃――。 ひどく疲れた。 部下の死を見続けた人生にガドルは疲れ切っていた。 ホルスターから銃を抜く。 取り立てて何の変哲も無い、無骨な官給品。 しかし、長年生死を共にしてきた相棒だ。 「エリナ、アリーゼ、済まん。私は軍人として……」 ……家族を大事に出来なかった。 そう言おうとしたのだろうか。 地面に血飛沫が広がる。 一人の男の命が、失われた瞬間だった。 ソラは、許せそうに無かった。 (これが、”生きるために必要な事”だって言うの?) 赤茶けた夕刻の空の下でソラが見たもの。 それは強者が敗者を蹂躙する姿そのものだった。 ガドルの思いも空しく、生き残りの政府軍はコニール率いる部隊に全員拘束されていた。 部隊の規律は意外な程高く、即リンチとかそういう事は無かったが、殺気だった雰囲気はソラには到底馴染めるものでは無い。 「おらっ!立て!!」 「このテロリスト共が……!」 「うるせえ!テメエ等が今まで何してきたか、ちったあ考えやがれ!!」 「ぶっ殺せ!殺しちまえ!!」 幾つもの残骸を背に男達の怒号が響く。 体が、震える。 人が人で無いものに見える時。 己の考えが、全く通じないと感じた時。 人は、本能的なものを感じる。――すなわち、恐怖。 ソラは恐わかった。どうしようもなく。 彼女がこの場に居るのは、センセイが連れてきたからだ。 センセイは負傷兵の治療のために現場に来なければならなかったが、ソラをここに連れてくる必要性は無かった。 ……しかし、あえてセンセイはソラを戦場に連れてきたのだった。 世界を、現実を見せるために。 (間違っていないのよ、本当は誰もが。でもね、結果として”間違い”と言われるのが世の中なのよ。ソラちゃん――貴方は、もっと世の中を知りなさい。私達が貴方の思っている”正義”では無いとしても) センセイに言われた言葉が響く。 (これが、世界の真実……?) 殺したいほど憎み合う――憎み合わなければ生きて行けない世界。 オーブでは、隣家で殺人事件が有っただけで非常線が張られる。 小さな犯罪でも人々は怯え、震え、恐怖する。――なのに、眼前の光景は何なのか。 今、目の前に居るのは人殺しの無法者。 ソラにはそうとしか見えなかった。 ソラは、恐れていた。だが、同時に悲しかった。 何も出来ない無力さが、とてももどかしかった。 「ほれ、持ってけよ。そこでひっくり返ってるトラックの積荷から見つけたんだ」 少尉がシンに渡したものは、綺麗な貴金属で出来たペンダントだった。 「……なんだ?これは」 シンは変わらずのぶっきらぼうな受け答えで、それを受け取る。 特におかしな所も無い、ごくありふれたシンプルなデザインの首飾りだ。 発信器でも付いているのかと、シンは訝しむ。 「いい加減鈍いね、お前は。お兄さんは悲しいよ。ソラちゃんへのプレゼントだよ」 「は?何で俺に?アンタが渡せばいいじゃないか」 シンにとっては思考の外である。 「レディに謝るんでしょう?それなら、それなりの事をした方が良いという事ですよ」 中尉は微笑みながら言う。 「ま、がんばんな。青春なんざ、直ぐに終わっちまうぞ」 二十歳を過ぎた大人に青春も何もあったものでは無いだろうと呆れるシンだったが、断るのも面倒だったので受け取る事にする。 (俺はアイツを良かれと思って助けた。が、そのあげくがこのザマだ) 人が人を助けるのは道理だ。 だが、それが何時も良い結果になるとは限らない。 ことにシンの場合はそれが顕著だった。 だから、結局の所シンは恐れている。 (俺は、アイツを……ソラを守れるのか?) シンは”守る”と誓った。 ソラを”オーブに帰す”と誓った。 口をついて出た言葉。 未だ果たされた事の無い約束。 未だ得るものの無い、空しい契約。 だが、だからこそ守りたい。 一度も、一人も守る事の出来なかった自分だからこそ思う、拙い思い。 せめて今回は、と。 シンは手に持ったペンダントを弄んでみる。 それは、シンの手の中でちゃらちゃらと音を立てて存在をアピールしていた。 シンにとっては全くといって良いほど必要性のないアイテムなのだが。 (それにしても、女の子ってのはこういうのを喜ぶものなのか?) いまいちよく分からなかったが、シンはとりあえずソラの元へ持って行こうと思った。 自分では判断が付きそうもないし、取りあえず欲しければ貰うだろうという判断からだ。 シンという男は、こういう方面にはとことん疎かった。 ソラは、悩んでいた。 今、自分がいる場所。 今、自分がしている事。 今、自分がさせられている事。 全てが納得出来ず、嫌な事だった。 負傷兵の手当ての合間にセンセイがソラを心配そうに見るが反応は薄い。 (やはり、早かったかしら。……いいえ、彼女は知らねばならなかった。この世界の本当の姿を。世界が、何によって支えられているのか。搾取する者と、搾取される者の姿を。人が人として生きるために、何が犠牲になっているのかを) それは、厳しい事だ。 そして、きつい事だ。 だが、センセイはソラのような子にこそ、知っておいて欲しいと思った。 (優しさだけでは、甘さだけでは、何も世界は変わりはしないのだから) センセイは、ソラに何をして欲しい、と思っている訳でもない。 だが、何も知らずに生きていくそれはしてはならないとも思う。 そんなセンセイの思いを余所に、ソラといえばぼんやりとしているだけだ。 ……パニック状態に、限りなく近い小康状態。ソラの現在の状況はそれだった。 (今は、そっとしておくしか無いわね) センセイはそう判断し、ソラに話しかけようとして――その前にセンセイにとっては限りなく意外な男がソラに話しかけてきた。 「おい、ソラ。なんだ来てたのか」 シンである。 「……?」 ぼんやりとシンを見上げるソラ。焦点が合っていない。 だがシンはそんなソラの状態に気が付かない。急に声を掛けたから戸惑っている、そんな風に見えているのだろうか。 暫く迷った末、シンはソラにペンダントを差し出した。 「やるよ。貰い物だが」 シンとしては、ソラの事を思いやったつもりだった。 その様を見ていたセンセイが頭を抱える程、幼稚な思いやり。 だから――次のソラの反応はシンの予想外だった。 「……いりません、そんな物」 見たくない――それは全てへの拒絶。一種のヒステリーに近いものである。 とはいえ、シンはそんな症状にはまるで気が付かない。 「何だよ、ほら。別に遠慮する必要はないぞ」 シンは、遠慮しているのだと思った。 慌ててセンセイが間に入ろうとするが手遅れだった。 「いらないって……言ってるのに!」 ソラは、思い切りシンの手を引っぱたいた。 ペンダントも地面に飛ばされる。 何をする――そう、シンは言おうとして。 「そんな……そんな、人殺しをして得た物を、私は欲しくなんか有りません!!」 その時、ようやくシンは悟った。 ソラという女の子に、自分がどんな目で見られていたのか。 (そりゃ、そうだよな……) 自嘲の思い。そして、諦め。 もはや自分にこの子に好かれる要因など無いというのに。 「何で……何でそんな事が出来るんですか!?どうして!!」 絶叫し、泣きじゃくるソラ。 そんな様子にメンバー達が何事かと集まってくる。 「どんな事があったって、やってる事はただの人殺しじゃないですか!?」 ソラの叫びに対しその場に居た殆どの者がソラに対して怒りを感じた。 ――何も知らない餓鬼が、と。 「ちょっと、アンタね。言っていい事と……!」 その者達を代表してコニールがソラに詰め寄る。 感情に任せ、コニールはソラを張り飛ばそうとする。 だが。 「止めろ!!」 意外にもそれを制したのはシンだった。 「シン!?何で!」 「止めろ……、コニール。ソラの言う通りだ」 コニールは何かを言おうとしたが、ただシンは悲しそうに微笑むだけで何も言わせなかった。 そして、立ち去る間際、小さな声でシンは言った。 「ソラ、あんたはそのままで居てくれ。そのままで……」 その言葉に、どれ程の思いが込められていたのだろう。 ソラも、コニールも、その場に居た者達は誰も解らなかった。 ただ一人、センセイだけがそれを察したが、あえてそれを誰かに教えようとはしなかった。 ソラは、立ち去っていくシンの後ろ姿から目を剃らせなかった。 (解らない。私には、あの人の事が……) 初めて会った時から、謎だらけの人。 けれども、何処か悲しくて、優しい人。 その時、確かにソラの心は――シンの方を向き始めていた。 このSSは原案文第4話「今ここにいる現実」Bパート(アリス氏原版に加筆、修正したものです。
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「ひいふうみい……補給部隊の護衛と言うにはルタンド8機は豪華過ぎだな」 大尉は呆れたように呟く。 ルタンドは第二次汎地球圏大戦(メイサア攻防戦)後に正式採用された統一地球圏連合の新鋭主力モビルスーツだ。 連合のウインダムやダガー、ザフトのザクなどに代わっていまや世界の主要各国はどこもこのルタンドを採用している。 もっとも東ユーラシア共和国の様に貧しい国は、第一線から退いた払い下げのザクやダガーを使っているのが通例だったのだが。 《予想通り、我々を誘き出す算段だという事でしょうね》 中尉は既に狙撃ポイントに着座していた。 スコープの調整に細心の注意を払いながらも、大尉にはしっかり返答する。 《にしても、順序が逆だろ?シンの奴。アイツが先に見つかってどーすんだよ》 少尉は相変わらずの口調でぼやく。 それは大尉も言いたい所だが、それとなく少尉を諭す。 「アイツは、なんだかんだで俺達に気を使ってるのさ」 《そりゃ、解らなくも無いッスけどね。あんなガキに気を使われるいわれは無いですよ?》 《……彼は、良い青年だという事ですよ》 中尉がまとめる。だが、その言い分は何処か哀愁がある。シンという青年が時折見せる、悲しみを超えた激情。それを何となく感じるからだろうか。 ともあれ―― 「先陣をアイツに取られるわけにもいかん。少尉、派手に行くぞ!」 《アイサー!派手にってんなら、お任せ!》 《了解。せいぜいこちらにも注意を引きつけます》 中尉のシグナスが持つスナイパーライフルが火を噴き、それに併せるように大尉、少尉がビーム突撃銃を乱射しながらルタンド部隊に肉薄していく。あっという間に砂塵は嵐となり、乱戦に突入した。 「隊長!さらに後方より別のモビルスーツ隊が出現!機数2!前方の敵モビルスーツも更に加速!前面に回り込まれます!」 次々にもたらされる部下の報告に、歴戦の指揮官は内心ほそく笑む 悲鳴のような士官の声を聞きながら、ガドルは悠然としていた。 「よし!モビルスーツ隊を二手に分けろ!前衛に2機、後衛に6機だ!”仕掛け”はどうなっている?」 ガドルは隣に座る副官に尋ねる。 「既に準備完了です。あとは合図を待つばかりです」 「良し。ベストな答えだ」 ガドルは満足そうに頷くと、トレーラー内に据え付けられた通信マイクを取り部隊全員にこう告げた。 「これより本隊は作戦通りテログループと交戦を開始する。各員は作戦通りの行動を行え。繰り返す、各員は……」 アナウンスをしながらガドルは思う。 (今は、まだ手を打つ時では無い) ガドルは腕組みをしながら待っていた。 これまでの情報を分析したところ、相手のモビルスーツ部隊は相当な訓練を積んだつわものだ。 数では勝っているが、とても一筋縄でいく相手では無い。 (結局、人身御供が必要と言うわけか) それはガドルが望むと望まざるに関わらず訪れる結末だろう。 だが指揮官が私情を挟む事以上の愚策は無い。 ガドルは静かに待っていた。 前面のモビルスーツ、ダストがこの補給部隊を、自分の乗るトレーラーを襲う瞬間を。 《シン、大尉達が敵の殆どを引きつけてくれている。お前が相手をするのは2機だけで良さそうだな》 「そうかい、じゃあ期待に応える為にも一瞬で終わらせてやるよ!」 シンはルタンドに向かうと見せかけて、いきなりダストを補給部隊の方向へ方向転換させた。 意表を突かれたルタンドは、つい反応が遅れる。 「うおおおおっ!」 身体にかかるGをねじ伏せるかのように、シンが吠える。 ルタンド達のビームライフルが火を噴くが、狙いが甘くダストの動きに付いて行く事が出来ない。 「ライフルを撃つまでもない!」 一気に間合いを詰めたダストはすれ違い様に、対艦刀でルタンドの胴を薙いだ。 ダストが通り過ぎた後、上半身と下半身が地に落ちて爆散する。 シンは追いすがるもう1機のルタンドを確認すると、ダストを跳躍させた。 反転した勢いのままダストは、ルタンドの頭部を蹴り砕く。 ルタンドは派手に転倒し動かなくなった。 その勢いを殺さないように反転したシンは、逃げ惑うトレーラー部隊を追い抜き、前面に陣取る。 《命まで取るつもりは無い。死にたくなければさっさと積み荷を置いていけ!》 右手にビームライフル、左手に対鑑刀を構え、威嚇する。 トレーラーから士官達が慌てて降りて、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。 「作戦成功、楽勝だな」 シンは張りつめた気が緩んでいくのを感じた。 ――それすら敵の作戦の内と気付かずに。 二機のルタンドを倒したダストがこちらに向かってくる。 車列中央のトレーラーに乗るガドルからもそれは見えた。 「ガンダム、か……」 ガドルは苦々しく呟く。 (テロリストが、小賢しい真似をするものだ) 『ガンダム』。 その名は、このCEでも特別な名前となりつつあった。 ”軍神”キラ=ヤマトが数々の伝説を築いた機体として。 そして世界の覇者、オーブの守る尖兵として。 その特徴のあるツインアイに二本角という顔を持つモビルスーツの総称を、いつしかマスコミは『ガンダム』と呼び、それはひとつの伝説になりつつあった。 勝者の伝説として。 (時代が変わる時、ガンダムは現れる。このモビルスーツもそうだというのか?) 平和の守護者、戦争を終結させうる者。 英雄を呼ぶモビルスーツ。 どれもこれも、マスメディアの作り上げた与太話。 だが、やはり軍人の間でもその存在感は無視出来ないのだ。 子供の好みそうな話。そんな話に大人が付き合う謂われは無い。 「下らん」 ダストがますます近づいてくる。 上半身を褐色に染めた18mの鉄の巨人は、もうこのトレーラーともう目と鼻の先に来ていた。 隣でおろおろしている副官にガドルはこう告げた。 「どうした、シュタインベル。貴官も逃げろ」 「しかし隊長!隊長はどうするのですか!?」 「私の事は良い。……行け」 なおも食い下がる副官を、ガドルは無理矢理トレーラーから降ろす。 副官は暫く迷ったが、歩み寄るモビルスーツの巨体を見て、慌てて逃げ出した。 悠然と歩いてくるダストの姿ににガドルは失笑を禁じ得ない。 「世界を救うのがガンダムで、世界を変えるのもガンダム?ふざけた話だ」 ダストは尚も近づいてくる。 ガドルの望み通り。 「貴様が”ガンダム”だと言うのなら……証明して見せろ!!」 ガドルがトレーラーのコンソールに、何事か操作を走らせる。 その瞬間、白煙が周囲を一気に覆った。 その白い煙は、歩兵部隊を率いていたコニールからも確認出来た。 一台だけではない。 全てのトレーラーから白煙が吹き出ていた。 各トレーラーの車体下部から噴出した白煙は瞬く間に戦場一帯を覆う。 「爆発?」 しかし、それにしては火の気がない。 その瞬間、違和感の正体に気付く。 「まさか……対モビルスーツ用スモークディスチャージャー!?」 慌ててコニールは双眼鏡を覗く。 そして、コニールはそこで信じられない光景を目撃した。 ――ビームの火線がダストを貫いていたのだ。 「くそおっ!!」 突如ビームライフルが真っ二つに切り裂かれた。 ビームサーベルだ。 コンマ秒反応が遅ければ、恐らく腕ごと持っていかれただろう。 トレーラーからスモークが発生した次の瞬間、その中からモビルスーツがビームサーベルを振るったのだ。 ――潜んでいたモビルスーツの名は『マサムネ』。 先日戦ったあの可変モビルスーツである。 マサムネはトレーラーのコンテナから勇躍飛び出すと、大上段に一気に切りかかった。 シンはダストのパワーを全開にして必死でサーベルの斬撃から逃れようとしたが、敵の方が早い。 火花が飛ぶ。 肩口にサーベルを突き立てられ、更にそこから押し込まれようとしている。 「クソ!」 機体が重い。 このままではマサムネのパワーに潰される。 そう判断したシンは身軽になるため、やむなく対艦刀シュペントゲーベルを手放した。 巨大な刀が左手から離れ、大地に落ちる。 《マサムネを格納していたのか。近づいてくる瞬間を狙っての奇襲とは、器用なものだ》 「感心してる場合か!」 今、ダストの手には武器は無かった。 「クッ……!」 《シン、後ろだ!》 レイが珍しく叫ぶ。 シンがそちらを見ると、いつの間にかもう一機マサムネが現れていた。 別の車両にも仕込まれていたのだろう。 見事な偽装だった。 「罠!?」 後から来たマサムネはビームライフルの銃口をダストに向ける。 (させるかよ!) 考えるよりも先に、体が動いた。 頭部バルカンをマサムネの頭部目掛けて乱射する。 マサムネがカメラへの被弾を避けるために一瞬退いたその隙に、背部フライトユニットを展開。 一気にブーストを最大出力で吹かせた。 「ぐっ!」 滅茶苦茶なGがシンを襲う。 ダストは体勢を後ろに傾けたままブーストをしたので、仰け反りながら飛んでいく。 なんとか機体を立て直そうするが最初のマサムネが肉薄しており、なかなか立て直すことが出来ない。 「しつこいっ!」 シンはマサムネをバルカンでさらに牽制しながら、地面と水平に背面飛行するダストをスラスターを吹かし強引に横回転させる。 マサムネがビームサーベルを振るう。 しかしダストは間一髪その一撃を避け、逆に回し蹴りを喰らわす。 思わぬ逆襲を受けたマサムネはそのままあらぬ方向に吹っ飛んで行った。 蹴りを支点にして方向を変えたダストはブーストを吹かし、相手の攻撃範囲から逃れる。 だが攻撃から逃れ着地しようとした刹那、そのタイミングを狙ってビームライフルが撃ち込まれた。 「!?」 もう一機のマサムネだ。 このままでは手放した対艦刀を拾う事すらままならない。 どうにかダストは着地すると、何とか横っ飛びに避け続ける。 《正確な狙撃だ。ブースト光を見て射撃しているのだろうが、いい腕をしている》 「さっきから敵を褒め過ぎだぞ!どっちの味方だ!」 冷静なレイも、こうなると鬱陶しいだけである。 今更ながらシンは実感していた。 プラントがオーブに併合された今、シンが在籍していたザフト軍の出身の者も多数、統一連合側に回っているだろう。 マサムネのパイロットが何者かは分からない。 だが眼前の敵は、前の大戦で戦った連合兵とは格段に腕が違っていた。 恐らくはコーディネイター。 こうして敵に回ればかくも驚異的な存在だとは、戦慄すら覚える。 唇が乾く。 今更ながら震えとも歓喜ともつかない感情が沸く。 シンは、この状況を切り抜けるため必死に考えを巡らせていた。 白煙の中でビームの残光が閃く。 その瞬間ダストに襲い掛かる2機のマサムネ。 その様子は大尉達にも目撃されていた。 大尉達は4機目のルタンドを倒した所だった。 残りも時間の問題だろう。 しかし…… 「くそぉ!これじゃあシンの支援に行けねぇ!!」 少尉の怒声が耳に付く。 「落ち着け!まず一つずつ倒せ!でなきゃ何時まで経っても終わらん!」 大尉も怒鳴り返す。 焦っているのは誰もが同じだ。 ルタンドの左腕が遠距離からの狙撃に打ち抜かれ、爆発する。 中尉の射撃は正確だ。 だが、こういった乱戦に於いては、その難易度は跳ね上がる。 如何に中尉といえど、一撃必殺はそうそう取れはしない。 ましてやスモークの中に支援砲撃など満足に出来るわけが無い。 「上手くいかないものですね……!」 弾を再装てんし、敵を狙う。 味方の血路を切り開くために。 「ちっくしょぉー!!」 少尉がビーム突撃銃を連射するが、ルタンドのシールドに阻まれなかなか有効打にならない。 ルタンド隊は時間稼ぎに徹しているのか消極的で、中々攻め崩す事が出来ない。 それは大尉も同じである。 二人の焦りは募るばかりだった。 シンも又、焦っていた。 なにせ遮蔽物など殆ど無い上に、二対一で基本性能は向こうが上。 挙げ句の果てにシンの手持ち武器は今やビームサーベル一本、頭部バルカン、両腕に仕込まれたスレイヤーウィップのみ。 射撃戦に対応出来るような武器は残されていないのだ。 《いささか乱暴だが、とにかく乱戦にして相手の射撃を封じなければならんだろう》 ビームサーベルを抜刀。 シンはもう一機に撃たせないように、ひたすら前衛のマサムネと切り結ぶ。 「おおおっ!」 裂帛の気合いを込め斬りかかるが、あっさりと受けられ、距離を取られる。 そこに、シンは追いすがり更に切り結ぶ。 何せ相手と離れてしまえば、またビームライフルの斉射が来るのだ。 《シン、急げ。スモークが消えたらこちらはじり貧だ》 「解ってる!」 そう。 今ビームライフルが来ないのは単に同士討ちを恐れての事だ。 この距離では視界が晴れてしまえば間合いを詰めるアドバンテージは消えてしまうだろう。 皮肉な事に、今はスモークがシンを守っていた。 「ち……キツイな」 さすがのシンも弱気にもなる。 《何を言っている。こんな所で死ぬのが、お前の目的だったのか?》 「まさか……っと!」 今度は相手が斬りかかってくる。踏ん張り、シールドで受け流すダスト。 《では諦めるという事か?ならば、今すぐ武器を置いて降伏しろ。お前は何としても生き延びなければならない。違うか?》 相棒はいつも強気だ。どんな時でも。 (俺は何で、いつも……) ――こうなってしまうのだろう。 何時も自分は、自分の置かれた状況を何とかしようと思っていた。 マユを失い、怒りと共に”世界を守るために””第二、第三のマユ=アスカを生み出さない為に”ザフトに入隊した。 だがその結果ザフトは世界の敵となり、シンは迷走の末に更なる地獄に行き着いた。 (何時も俺は、誰かを、何かを守ろうとしているのに!) ――悲痛なまでの決意。シンという青年は、何時もそればかり考えていた。 しかしその結果は何時も最悪の形で裏切られてきた。 しかもそれは”守ろうとしていた人達が、何時も自分の身代わりの様に死んでいった”という形だった。 ――俺が死ぬべきだったのか。 いつも悔恨のみが残る。 怒りの炎。 それは、己への悔恨。 罪業を背負い、尚も許せぬ自分を鍛え、燃やし尽くす黒き炎。 憎しみと、怒り――何よりも、優しく悲しい炎。 (マユ、ステラ、ルナ……俺は、君達を殺してしまっても……死なせてしまっても、生きる価値がある程の人間だっていうのか?) それは、決して尽きぬ疑問。 それこそが、今のシンを生かしている原動力だと知りもせずに。 何時か、それは解る時が来るのだろうか。 自分が何故生まれ、生きていくのか。 それは決して解き明かせる日の来ない、永遠の問いかけだと気付きつつも。 だが――今は、今はまだ。 「諦める?諦めるだって!?俺が!?」 その言葉が――思いが炎を燃え上がらせる。 何かが、シンの中で蠢く。 心にぽっかりと開いた穴が呼び寄せた魔獣。 それが今正にシンを突き動かしていく――生きるために。 「良いだろう。諦めてやるさ!」 《シン!?》 シンは自らシールドを捨て、ダストを引かせる。 《何を考えている!?狙撃されるぞ!?》 「諦めてやる……諦めてやるさ!ただし、俺が諦めるのは”死ぬ事”だ!!」 こんな地獄の様な世界で、怨嗟を常に聞き続け、それでも憎しみを捨てないで。 己を厭い、嫌い、恨み。その果てにある世界に幸せなど有るものか。 有る訳が無いと知りながら。 今、シンの体は熱く燃え上がっていた。しかし、心は凍てつく様に冷たい。 世界の全てが緩やかに流れていくような、意識がクリアになる感覚。 その境地は、かつてシンも体験していた。 狂える戦士が辿り着く、怨嗟の果ての境地。その名は―― 次の瞬間、その場に居た誰もが目を疑った。 ダストが己の持つビームサーベルを天空に向かって放り投げたのだ。 今正にビームライフルを撃とうとした者も、ついさっきまでダストと切り結んでいた者も、天空に舞うビームサーベルから目が離せなかった。 ――何故? それは、当然の疑問。 降伏するつもりもないのに唯一の武器を捨てる人間など、居るはずがないからだ。 だが、ダストは――シンは捨てた。何故か。 誰もが天空に舞い上げられたサーベルに見入ったほんの一瞬――その隙をシンは、ダストは逃さなかった。 ブーストを使わないただの跳躍だったが、意表を突かれたビームサーベル所持のマサムネは一気に懐に飛び込まれる。 マサムネのパイロットは一瞬虚を突かれるも、「自棄になったのか」と笑った。 素手と剣、負ける方がおかしいのだから。 だがシンの動きは相手の予想を超えていた。 ダストの左腕が動き、そこから何かが伸びる。 ビームサーベルの間合いより遠く、速く。 マサムネのビームサーベルを持った手をワイヤー絡め取った。 そして、ワイヤーは一瞬激しく瞬く。 グフイグナイテッドと同じ武器、スレイヤーウィップだ。 「こいつっ!これを狙って!?」 コクピットにまで被害は及ばなかったものの腕部の電気系統がショートし、使い物にならなくなる。 しかし今のシンの狙いはそれでは無かった。 ワイヤーを巻きつけたまま飛び上がるダスト。 (正気か!?) ブーストなど使えば、もう1機のマサムネが完璧に狙撃する。それは、確実な事のはずだ。だが……。 ビームの光条が走る。 だが、それはダストなど存在しない明後日の空間。 その時になって、マサムネのパイロットはシンの狙いを理解した。 右腕に絡み付いたスレイヤーウィップ。それを支点とし、ダストは異常な旋回を見せていた。 狙撃手が予測する空間を超える軌道――それをシンはスレイヤーウィップを使って生み出していた。 軽量機とはいえマサムネはダストより重いが、ダストのフルブーストの勢いに抗しきれず引き摺り倒される。 左腕のスレイヤーウィップを切断して仰向けのまま狙撃してきたマサムネに接近する。 ダストは弧を描いた軌道のまま突き進み、地面すれすれをフルブーストするために仰向けのまま飛んで行っているのだ。 あまりの予想外の動きに、狙撃も想定していた精度では撃てない。 ダストの両手にはいつの間にかアーマーシュナイダーが握られていた。 最後のビームライフルをまたも横旋回して避け、ダストはマサムネに肉薄する。 狙い違わず、一方のナイフはビームライフルごと腕を破壊し、もう一方は頭ごと胴体部を切り裂いた。 そしてダストは宙返りの要領で回転し、その動きのまま蹴りを相手の胴体に見舞う。 胴体部に残された対モビルスーツ用ナイフ――、アーマーシュナイダーが更にマサムネの胴体部に押し込まれ、それはコクピットにも達した。 吹き飛んだマサムネは一拍置いて爆散する。 ダストは一回転し、無事に着地した。 「ば、馬鹿な!」 もう一機の、先刻までダストと切り結んでいたマサムネのパイロットは戦慄する。 有り得ない。 何もかもが有り得ない。 こいつは、一体何なのか。 だが、ダストは未だ着地の姿勢から動いては居ない。 駆動系が故障したのかもしれない。 とにかく、マサムネにとっては最大のチャンスだった。 マサムネのパイロットがライフルを取り出し構えようとした時…… いつの間にかダストの右腕には対鑑刀、シュベルトゲベールが握られていた。 スレイヤーウィップで巻き取っていたのだ。 ダストのツインカメラが輝く。 まるで全てを解き放たれた獣がその咆哮を内に秘め、研ぎ澄まされた牙を相手に叩き込むかのように。 ――次の瞬間マサムネは真っ二つになり、爆散した。 大尉達がようやくルタンド部隊を撃破し、応援に来た頃には全て終わっていた。 全身傷だらけではあるものの健在なダストの姿を確認した三人は安堵する。 《なんだぁ?俺たちの分まで取っちまったのかよ》 《伏兵がいたようですね。遅れて申し訳ない》 《ま、無事で何よりだ》 通信機から聞える声は、三者三様のあんまりな言い様。 しかしその裏に潜む仲間の無事に心から安堵する気持ちが見えていた。 死にかけたがシンは怒る気にはなれなかった。 ガドルは驚いてはいなかった。 (全ては、こうなる運命だった。それだけだ) 補給部隊は壊滅した。 そしてそれと引き換えにリヴァイブのモビルスーツ隊を倒すはずだった切り札のマサムネ隊も。 破損したドレーラーから何とか這い出たガドルは、呆然と結末を見続けていた。 共に来た補給部隊のトラックやトレーラーだけでなく、護衛のモビルスーツも全て破壊されていた。 全てが地に伏し真っ黒な煙を噴き出して、炎上している。 破壊の狭間を、ふらふらと当てもなく歩いていくと、一人の青年の遺体を見つけた。 見覚えがある。シュタインベルだ。 破片にでも当たったのだろうか、頭から血を流して事切れていた。 (なんて事だ……) ガドルは愕然と膝を落とした。 この作戦が司令部から下された時、ガドルは引き受ける代わりに条件を出した。 あたら部下をそのような囮に使うべきでは無い。可能な限り最小限の人員で作戦遂行を。出来る事なら自分ひとりでも、――と。 しかしガドルの思いとは裏腹に上はそれをあっさりと却下し、相当数の人員を回してきた。 ガリウス司令は言う。 治安警察との関係上、今回の作戦は失敗するわけにはいかんのだよ――と。 部下の命より組織の面子が大事なのか。 シュタインベルの遺体を見下ろしながら、ガドルは嘆息した。 (……癒着、か。今までは必要悪だと思っていたが、これこそが世界を歪めていくものだと思えてならん) 軍人として、上からの命令は絶対だが、彼はせめて彼の権限で部下の命だけは救いたかった。 意味もなく死ぬ事など無いと、思っていたからだ。 だからシュタインベルに逃げろと言った。 ――だが。 「なんと情けない事だ。私は、私自身が軍規を乱した事が、許せずにおるとは」 それは、言葉の通りの意味では無いのかもしれない。 もし敵前逃亡などさせなければ、シュタインベルは今頃――。 ひどく疲れた。 部下の死を見続けた人生にガドルは疲れ切っていた。 ホルスターから銃を抜く。 取り立てて何の変哲も無い、無骨な官給品。 しかし、長年生死を共にしてきた相棒だ。 「エリナ、アリーゼ、済まん。私は軍人として……」 ……家族を大事に出来なかった。 そう言おうとしたのだろうか。 地面に血飛沫が広がる。 一人の男の命が、失われた瞬間だった。 ソラは、許せそうに無かった。 (これが、”生きるために必要な事”だって言うの?) 赤茶けた夕刻の空の下でソラが見たもの。 それは強者が敗者を蹂躙する姿そのものだった。 ガドルの思いも空しく、生き残りの政府軍はコニール率いる部隊に全員拘束されていた。 部隊の規律は意外な程高く、即リンチとかそういう事は無かったが、殺気だった雰囲気はソラには到底馴染めるものでは無い。 「おらっ!立て!!」 「このテロリスト共が……!」 「うるせえ!テメエ等が今まで何してきたか、ちったあ考えやがれ!!」 「ぶっ殺せ!殺しちまえ!!」 幾つもの残骸を背に男達の怒号が響く。 体が、震える。 人が人で無いものに見える時。 己の考えが、全く通じないと感じた時。 人は、本能的なものを感じる。――すなわち、恐怖。 ソラは恐わかった。どうしようもなく。 彼女がこの場に居るのは、センセイが連れてきたからだ。 センセイは負傷兵の治療のために現場に来なければならなかったが、ソラをここに連れてくる必要性は無かった。 ……しかし、あえてセンセイはソラを戦場に連れてきたのだった。 世界を、現実を見せるために。 (間違っていないのよ、本当は誰もが。でもね、結果として”間違い”と言われるのが世の中なのよ。ソラちゃん――貴方は、もっと世の中を知りなさい。私達が貴方の思っている”正義”では無いとしても) センセイに言われた言葉が響く。 (これが、世界の真実……?) 殺したいほど憎み合う――憎み合わなければ生きて行けない世界。 オーブでは、隣家で殺人事件が有っただけで非常線が張られる。 小さな犯罪でも人々は怯え、震え、恐怖する。――なのに、眼前の光景は何なのか。 今、目の前に居るのは人殺しの無法者。 ソラにはそうとしか見えなかった。 ソラは、恐れていた。だが、同時に悲しかった。 何も出来ない無力さが、とてももどかしかった。 「ほれ、持ってけよ。そこでひっくり返ってるトラックの積荷から見つけたんだ」 少尉がシンに渡したものは、綺麗な貴金属で出来たペンダントだった。 「……なんだ?これは」 シンは変わらずのぶっきらぼうな受け答えで、それを受け取る。 特におかしな所も無い、ごくありふれたシンプルなデザインの首飾りだ。 発信器でも付いているのかと、シンは訝しむ。 「いい加減鈍いね、お前は。お兄さんは悲しいよ。ソラちゃんへのプレゼントだよ」 「は?何で俺に?アンタが渡せばいいじゃないか」 シンにとっては思考の外である。 「レディに謝るんでしょう?それなら、それなりの事をした方が良いという事ですよ」 中尉は微笑みながら言う。 「ま、がんばんな。青春なんざ、直ぐに終わっちまうぞ」 二十歳を過ぎた大人に青春も何もあったものでは無いだろうと呆れるシンだったが、断るのも面倒だったので受け取る事にする。 (俺はアイツを良かれと思って助けた。が、そのあげくがこのザマだ) 人が人を助けるのは道理だ。 だが、それが何時も良い結果になるとは限らない。 ことにシンの場合はそれが顕著だった。 だから、結局の所シンは恐れている。 (俺は、アイツを……ソラを守れるのか?) シンは”守る”と誓った。 ソラを”オーブに帰す”と誓った。 口をついて出た言葉。 未だ果たされた事の無い約束。 未だ得るものの無い、空しい契約。 だが、だからこそ守りたい。 一度も、一人も守る事の出来なかった自分だからこそ思う、拙い思い。 せめて今回は、と。 シンは手に持ったペンダントを弄んでみる。 それは、シンの手の中でちゃらちゃらと音を立てて存在をアピールしていた。 シンにとっては全くといって良いほど必要性のないアイテムなのだが。 (それにしても、女の子ってのはこういうのを喜ぶものなのか?) いまいちよく分からなかったが、シンはとりあえずソラの元へ持って行こうと思った。 自分では判断が付きそうもないし、取りあえず欲しければ貰うだろうという判断からだ。 シンという男は、こういう方面にはとことん疎かった。 ソラは、悩んでいた。 今、自分がいる場所。 今、自分がしている事。 今、自分がさせられている事。 全てが納得出来ず、嫌な事だった。 負傷兵の手当ての合間にセンセイがソラを心配そうに見るが反応は薄い。 (やはり、早かったかしら。……いいえ、彼女は知らねばならなかった。この世界の本当の姿を。世界が、何によって支えられているのか。搾取する者と、搾取される者の姿を。人が人として生きるために、何が犠牲になっているのかを) それは、厳しい事だ。 そして、きつい事だ。 だが、センセイはソラのような子にこそ、知っておいて欲しいと思った。 (優しさだけでは、甘さだけでは、何も世界は変わりはしないのだから) センセイは、ソラに何をして欲しい、と思っている訳でもない。 だが、何も知らずに生きていくそれはしてはならないとも思う。 そんなセンセイの思いを余所に、ソラといえばぼんやりとしているだけだ。 ……パニック状態に、限りなく近い小康状態。ソラの現在の状況はそれだった。 (今は、そっとしておくしか無いわね) センセイはそう判断し、ソラに話しかけようとして――その前にセンセイにとっては限りなく意外な男がソラに話しかけてきた。 「おい、ソラ。なんだ来てたのか」 シンである。 「……?」 ぼんやりとシンを見上げるソラ。焦点が合っていない。 だがシンはそんなソラの状態に気が付かない。急に声を掛けたから戸惑っている、そんな風に見えているのだろうか。 暫く迷った末、シンはソラにペンダントを差し出した。 「やるよ。貰い物だが」 シンとしては、ソラの事を思いやったつもりだった。 その様を見ていたセンセイが頭を抱える程、幼稚な思いやり。 だから――次のソラの反応はシンの予想外だった。 「……いりません、そんな物」 見たくない――それは全てへの拒絶。一種のヒステリーに近いものである。 とはいえ、シンはそんな症状にはまるで気が付かない。 「何だよ、ほら。別に遠慮する必要はないぞ」 シンは、遠慮しているのだと思った。 慌ててセンセイが間に入ろうとするが手遅れだった。 「いらないって……言ってるのに!」 ソラは、思い切りシンの手を引っぱたいた。 ペンダントも地面に飛ばされる。 何をする――そう、シンは言おうとして。 「そんな……そんな、人殺しをして得た物を、私は欲しくなんか有りません!!」 その時、ようやくシンは悟った。 ソラという女の子に、自分がどんな目で見られていたのか。 (そりゃ、そうだよな……) 自嘲の思い。そして、諦め。 もはや自分にこの子に好かれる要因など無いというのに。 「何で……何でそんな事が出来るんですか!?どうして!!」 絶叫し、泣きじゃくるソラ。 そんな様子にメンバー達が何事かと集まってくる。 「どんな事があったって、やってる事はただの人殺しじゃないですか!?」 ソラの叫びに対しその場に居た殆どの者がソラに対して怒りを感じた。 ――何も知らない餓鬼が、と。 「ちょっと、アンタね。言っていい事と……!」 その者達を代表してコニールがソラに詰め寄る。 感情に任せ、コニールはソラを張り飛ばそうとする。 だが。 「止めろ!!」 意外にもそれを制したのはシンだった。 「シン!?何で!」 「止めろ……、コニール。ソラの言う通りだ」 コニールは何かを言おうとしたが、ただシンは悲しそうに微笑むだけで何も言わせなかった。 そして、立ち去る間際、小さな声でシンは言った。 「ソラ、あんたはそのままで居てくれ。そのままで……」 その言葉に、どれ程の思いが込められていたのだろう。 ソラも、コニールも、その場に居た者達は誰も解らなかった。 ただ一人、センセイだけがそれを察したが、あえてそれを誰かに教えようとはしなかった。 ソラは、立ち去っていくシンの後ろ姿から目を剃らせなかった。 (解らない。私には、あの人の事が……) 初めて会った時から、謎だらけの人。 けれども、何処か悲しくて、優しい人。 その時、確かにソラの心は――シンの方を向き始めていた。 このSSは原案文第4話「今ここにいる現実」Bパート(アリス氏原版に加筆、修正したものです。
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再びリヴァイブ基地に連れ帰られたソラは、基地の一室で保護されていた。 他に誰もいない部屋の中、粗末なベッドの上にソラは膝を抱えて座っている。 頭の中はずっと昨日の出来事で一杯だった。 凄まじい爆音と閃光。 鉄のひしゃげる嫌な音と圧倒的な破砕音。 巨大な鋼鉄同士のぶつかり合い。 その全てが幻想とすら思えるほどの、しかし決して夢でも幻でもない現実。 「あれが、戦争……なんだ……」 ソラはモビルスーツを今まで見たことがないわけでない。 むしろ治安警察やラクス=クライン親衛隊のピースガーディアンなど、平和を守る力の象徴として日常的に、とまでいわないまでもTVや式典などで見かけることは度々あった。 その巨大さと力強さに、頼もしさすら覚えたほどだ。統一連合主席カガリ=ユラ=アスハの操る、金色の守護神アカツキなど特に。だが昨日見たその光景は、今までの評価を180度変えるに足るものだった。 「怖い……怖いよ……」 膝を抱える手が震える。ソラはそうしていれば恐怖から逃れられるかのように、より強く膝を抱えた。 「こうなっちゃうと、もうオーブに帰せるのはいつになるか……。いや、もしかしたらもう二度と帰せないかも知れないな。本当に困ったよ」 自室になっている書斎のソファーに深く腰を沈めながら、ロマはやや大仰にため息をついた。 向かいには艶やかな亜麻色の髪をした白衣の美しい女性が座っている。 年の頃はおそらく20代後半だろうか。 銀縁の眼鏡の奥にある視線は、ロマとは対照的に物静かで知的な印象を漂わせる。 「でも全ての可能性が絶たれたわけではないでしょう?リーダー」 「まあね。交渉ルートはいくつかあるからそっちに働きかけてみるけど、それでも時間がかかるだろう。問題は……」 「あの子がここで生活していけるかですね」 「そういう事だよ。センセイ」 普段ロマはほとんどのメンバーに対して弱音を吐くことがない。 その例外の一人が今、彼の目の前にいる女性、通称『センセイ』だ。 彼女はレジスタンス組織リヴァイブの医療を一手に引き受ける軍医である。 職業柄に加えその美貌と落ち着いた物腰で、リヴァイブ内での人気や信頼度は高い。 だがその一方、彼女の経歴は誰も知らない。 それどころか、本名すら明かされていないのだ。 しかしメンバー誰もそれを疑問にも思わない。 そんな例は他にもあるから。 だから皆、愛着と信頼を込めて彼女の事を『センセイ』と呼んでいる。 それはロマも変わらない。 彼は腕組みをし、センセイに話を続ける。 「放り出すわけにもいかないし、当分は監視付で軟禁状態にするしかないかな?いっそオーブに帰ることを諦めてくれたら楽なんだけどね」 「はっきり言ってそれは現状では有り得ないですね」 「そうなんだよね。……しょうがない、当分軟禁生活で我慢してもらおう」 「わかりました。では一応は本人に訊ねておきますわ」 「軟禁か帰るのを諦めるか、どちらにするかをかい?」 「選択肢が全くないのと自分で選んだ結論とでは、全然違いますもの」 「僕たちってずるい大人だよね……」 無言でセンセイをしばらく見つめた後、ユウナは言った。 「すまない。嫌な役をやらせる」 「いえ、お気になさらずに。では失礼します」 そう言ってセンセイが去って行った部屋に、もう一度だけロマのため息がこぼれたのだった。 ロマの自室を出た後、センセイはソラのいる部屋に向う。 彼女の部屋は前の大戦で連合がこの基地を使っていた時、士官用個室として使われていたものだ。 粗末だがベットはもちろん、簡単な洗面台はもちろんエアコンなども整っている。 シン達がすし詰めにされている大部屋より遥かにいい待遇だ。 しかしその部屋のドアの前には、若い青年兵が腕を組んで見張りに立っていて、それが今のソラの状況を如実に示していた。 「見張り、ご苦労様」 「おや、センセイ。どうかしましたか?」 「ちょっとリーダーに頼まれてソラさんにお話を、ね。何か変わったことは?」 「静かなものです。静か過ぎて、少し心配な位です」 見張りの青年に「そう、分かったわ」と声をかけると、センセイはコンコンと軽くドアをノックした。 「ソラさん?ちょっといいかしら?あなたに是非話したい事があるの」 返事は無い。 「ソラさん?寝てるの?」 再び問いかけてから、ドアをノックする。 しかしまたもや返事はない。仕方がないのでドアを開ける事にした。 もしかして何かしているのかもしれない。あるいは……。 青年に何があっても対処できるように、目配せをする。 彼もそれを理解し、小さく頷いた。 「ソラさん、開けるわよ。いいわね」 そう言ってセンセイはドアの鍵を開ける。 部屋の中には小さな机と洗面台、そしてベットがあった。 ソラはそのベットの隅っこにじっと座っている。 「ソラさん?なんだ、起きてる……」 しかし最後まで言うまでもなく、センセイはソラの異常に気付く。 普通は部屋の中に誰かが入れば多少はそちらを注目するものだが、今のソラは完璧に無反応だった。 視線が空に浮いているのが、遠目にも分かる。一種のショック状態だ。 医者である彼女には、こうなった理由はすぐに分かった。 (何も知らない年頃の女の子が、いきなりモビルスーツ同士の戦闘を間近で見たんだもの。こうもなるわね) そっと隣に座るが、それでもソラは何の反応も示さない。 するとセンセイはそんな彼女を、後ろからそっと包み込むように抱きしめる。 その途端、今まで無反応だったソラが突如暴れだした。 「いやぁっ!放して……放してぇ!!」 「……」 暴れるままにセンセイの腕や足など、手の届く範囲を殴打し、引っ掻く。 しかしセンセイは無言のままギュっと抱きしめ続けた。 「帰して……家に……、オーブに帰してぇ……」 叫び声に涙が混じり始めた頃、落ち着いたというより暴れることに疲れたせいか、やっとソラは静かになった。 だがやはりセンセイは無言のまま抱きしめ続ける。 白衣越しに緩やかなセンセイの温もりがソラに伝わり、その穏やかさに少しずつソラの心に平静さが戻ってくる。 「大丈夫……。大丈夫だから……」 じっとソラを抱きしめて、静かになだめ続ける。 しばらくするとソラの瞳に生気が戻ってきた。 それを見極めると、センセイはそっとソラを離す。 「……少しは落ち着いたかしら?」 「……」 ソラは何も言わない。 しかしさっきまで荒かった息が、今は静かだ。 やっと落ち着いたらしい。 するとセンセイはそっとソラを離し、今度は正面から彼女を見据えた。 「……謝っても許されることじゃないけど、ごめんなさい」 初めて見る見知らぬ白衣の女性に謝られて、それまで黙っていたソラもたどたどしく問いかけた。 「……あの……あなたは?」 まだ少し戸惑っているソラを刺激しないように、センセイはゆっくりとした口調で自己紹介をした。 「……初めてお会いするわね。私はこの基地に勤めてる医者で、皆から『センセイ』って呼ばれてるわ。よろしくね」 「……センセイ?それ……名前なんですか?」 「訳あって匿名希望なのよ。でも名無しの権兵じゃ何だから『センセイ』ってワケ。医者だし、いつもこんな格好だからおあつらえ向きね」 そういってセンセイは白衣を摘んで見せてみる。 ソラはクスッと少しだけ笑った。 センセイからはコニールやシン達の様などこかギラギラした雰囲気はしない。 彼女の落ち着いた余裕がソラにそう感じさせていたのかもしれない。 それまであった彼女の警戒心が和らいだのがセンセイにも分かった。 そしてセンセイはさっきまでとは違う真摯な表情で告げる。 「ソラさん。私達はあなたには謝らなければいけないわね。あなたを巻き込んでしまった上に、また基地に戻す事になってしまって。どんなに謝っても許されることじゃないのはわかっているわ。でも、本当にごめんなさいね」 そういうとセンセイは深く頭を下げる。 「なるべく早くオーブに帰してあげたかったんだけど、現状では難しくなった、というのはわかるわね」 「……はい」 一言返事をした後は、しっかりとセンセイの目を見て話を聞いている。 「そこでこれからどうするか、あなたにも決断してもらわないといけないの。これはとても大事な事なのよ。あなたには二つの選択肢があるわ。どちらも辛いでしょうけど、ここではっきりと選んでちょうだい」 「……」 ソラは何も言わない。 そこでセンセイは一拍置いてゆっくりとソラに語りかけた。 「一つは、あなたがオーブ帰ることを諦めること。住居は提供するし、生活費もあなたが成人するか、リヴァイブが瓦解するまでは保障します」 「そんな!帰るのを諦めるなんて!!」 「でしょうね。では、あなたにはもう一つの選択肢を選んでもらうしかないわ。あなたをオーブに帰すことができるまで、この基地内で軟禁状態になる、という選択肢を」 「軟禁、状態?」 「そう、軟禁。つまり戦争が終わるか、あなたがオーブに帰れるようになるまで、どこか一室にずっと閉じこもったままでいてもらうの。戦争において相手の情報はとても大事だわ。あなたがリヴァイブについて知れば知るほど、あなたをオーブに帰した時の私達のリスクが増える。だから本当にオーブに帰りたいのなら、あなたはルールを守って欲しいの。それは私達”リヴァイブ”について知ろうとしないこと」 「だから私を軟禁、ですか」 一度頷いてからセンセイは続ける。 「繰り返すけどごめんなさい、あなたには、この二つのどちらかを選んでもらうしかないの。不条理と思うでしょうけど、これが戦争をしている私たちができる、ギリギリの譲歩なのよ」 「そうですよね……。戦争、してるんですもんね」 それだけ呟くと再びソラは無言になる。 僅かな呼吸音だけが部屋を満たす。 「それでも、やっぱりオーブに帰してください。お願いします」 「わかったわ。リーダーには、そう伝えておきます」 小声だがしっかりと答えたソラに、センセイは頷きながら言葉を返す。 そんなセンセイの二の腕に少しだが引っかき傷があるのにソラは気付いた。 「あ、あの!その腕の傷……ごめんなさい、私がつけた傷ですよね」 「あら?女の身体を傷物にしたのよ?言葉だけで許してもらえると思ってるの?」 「え?」 素直に戸惑うソラにセンセイは忍び笑いを漏らす。 「うふふ、冗談よ。レジスタンスやっているんですもの、こんなのは傷のうちにも入らないわ」 「酷い。からかったんですね」 ほんの少しだが、初めて笑みらしいものを見せた。 そしてソラは微笑むセンセイを見て、前から疑問に思っていたことを意を決して訊ねた。 「……センセイはなんでレジスタンスなんてしているんですか?それに匿名希望って……」 「あら、また随分と直球ね。でもね、秘密は大人の女のアクセサリーよ。そう簡単に教えるわけには、ね?」 「……」 はぐらかす様に冗談めかして答えるセンセイだったが、ソラの真剣な眼差しに折れてしまう。 「ふう……。仕方ないわね。秘密にすると約束してくれるなら、少しだけ教えてあげるわ」 頷くソラをを見てセンセイは口を開く。 「私はね……」 「ここかい?シンが馬鹿やって攫ってきたっていう女の子の部屋は!」 二人の邪魔をするドヤトヤと騒がしい声。 センセイが肝心なことを話す前に、それは突如部屋に乱入してきた屈強そうな男達に遮られた。 「……仮にも女の子の部屋よ?ノックくらいしたらどうなの?」 呆れたように問うセンセイに、先ほど大声を上げながら入ってきた赤いメッシュの入った金髪が特徴の男が答えた。 「そんな硬いこと言うなって。あ、君が噂の子だね。う~ん。五年後くらいが楽しみだ。俺のことは気軽に『少尉さん』って呼んでくれ。よろしく!」 「は、はぁ……よろしくお願いします」 そういうと男はいきなり右手を差し出さしてきた。 相手の気迫と陽気な笑みに押し切られて、ソラは思わず握手してしまう。 「君、名前は?」 「ソ、ソラ=ヒダカといいます……」 「ソラちゃんかあ。爽やかないい名前だね~。しかしシンの馬鹿に巻き込まれるなんて大変だったね。ソラちゃん、その胸の悲しみを僕に、どうぞ打ち明けたまえ」 両手を広げて「飛び込んでおいで」と暑苦しい位爽やかな笑みを浮かべる少尉の顎に拳が叩き込まれた。 ガツン!と鈍い音が響く。 「そういう俺達の品位を疑われるようなことはするな、とあれほど言った筈だが?」 「いっつー!いきなり何すんですか大尉!俺は言われたとおり紳士的に振舞ってるじゃないです……くわ!?」 顎を押さえてしゃがみ込んだ少尉の頭に、黒い拳が目掛けて落ちていた。 悶絶している少尉の後ろから、ぬっと煙草を咥えた色の黒い大男が現れる。 見慣れない風体にソラは思わずぎょっとする。 「ソラさん……、だったな?こいつの女好きは病気なんだ。どうか許してやって欲しい。私の事は大尉と呼んでくれ」 「ど、どうも……。あの……私気にしてませんから……」 大尉と名乗った黒人男性はすっと手を差し出す。 ソラはおっかなびっくり握り返すが、固い掌からこの人も戦場を潜り抜けてきた人なんだと、漠然と感じた。 先ほどの少尉と名乗った男も筋肉質な体型だったが、大尉はそれとは比べ物にならないほどごつい体つきをしている。 少尉よりも低い身長も合わさって遠目に見たら、少々肥満体にすら見えるほど発達した筋肉をしている。 ただその容姿とオーブではあまり見かけない黒人ということもあってソラは、大尉の丁寧な謝罪と挨拶にも関わらず少し怯えていた。 「大尉~、ソラちゃんが怯えてるじゃないっすか。大体女の子を慰めるのなんて大尉のキャラにはあってないんすからやっぱりここは俺が」 「どうしてももう一発欲しいようだな、ああん!?」 握り拳を作って少尉に迫る大尉。 そんな二人の後ろから無表情、というには僅かながら眉を寄せた顔付きで男が入ってくる。 「何やってんですか、二人とも。彼女すっかり怯えていますよ」 「や、そうだったか。スマンな中尉。気づかなかった」 「だから俺がさっきから……」 もう一発少尉の頭にゲンコツが飛んだ。 中尉と呼ばれた第三の男。 ソラのこの男の第一印象は「細い」だった。 しかしそれは少尉より頭半分ほど高い身長によって全体像として細く見えるだけで、腕の太さなど局部だけを見ればやはり強靭そうな筋肉に覆われていた。 「申し訳ありません、センセイ。止めようとはしたのですが二人がかりでは流石に不可能でした」 「……気にしないで、大体の事情は察しがつくから」 入り口付近で大声で騒ぐ大尉と少尉の二人にちらりと目をやる。 「いつもの事ってことなのよね」 センセイはふうっとため息をついた。 通称『大尉』、『中尉』、『少尉』。 この三人は貴重なモビルスーツのパイロットであり、皆の信頼を集めるリヴァイブの中核メンバー達である。 しかしその反面プライベートにおける行動はあまり評判はよろしくない。 決して悪い人間ではないのだが少尉は事あるごとに女性にちょっかいを出すし、大尉は”面白そう”という理由だけで結構突飛な行動をすることもしばしば。 中尉が二人を抑えに入るが大抵押し切られてしまう……というのが何時もの流れだった。 ただセンセイの立場から言えば呆れる事ばかりだし、もう少し自重してくれると助かる、とも思っている。 ちなみに中尉は三人の中では紳士然とした抜きん出た常識人で、センセイも彼をとてもく信頼している。 ただもう少し二人への抑えが効けば嬉しい、と密かにさらなる期待をしているのは秘密だ。 もっともそれは無理な話なのだが。 「……三人とももう挨拶も済んだんだし満足でしょう?モビルスーツのパイロットは休むのも仕事のうちなんだから。あんまりふらふら出歩いてないで自室に戻ったらどうなのよ」 「甘いぜ、センセイ。俺達は三人一組だぜ?三位一体、一蓮托生!俺達三人で見張りに立てばバッチリでしょ!!」 「中尉……」 「申し訳ありません。そういうわけでして……」 「大尉……」 「このバカを一人でここに置けと?狼の前に何とやらですよ、センセイ」 「……」 少尉にヘッドロックをかけたまま大尉は断言する。 センセイは思わず軽い頭痛を覚えた。 すると入り口の向こうから、それまで見張りをしていた青年が途方に暮れた様に聞いてくる。 「あのー、私は?」 「お前はとっとと休憩に入れ!交代だ、交代!」 シッシッと少尉は青年を追い払おうとする。 ところが不意にひょっこりと青年の横から小ぶりな男の子が現れた。 「駄目だよー。ここからは俺の見張り番だから」 「シ、シゲト!?」 「へっへー、ここの見張り番はオイラの役目に回ってきたのさ、で、ちょうど今が見張りの交代時間ってわけ」 短く刈った茶髪とニンマリと笑う笑顔。 典型的なわんぱく坊主といった感じだ。 と言っても既に女の子一人に女性一人、さらにごつい男が三人も居る部屋は満杯の状態で部屋の入り口に立った、の方が正しい表現だが。 「見張りって誰の命令だよ」 「リーダーだよ。ほら、交代のスケジュール表にもちゃんと書いてる」 そういうとシゲトと呼ばれた少年は大尉達に交代要員の一覧が書かれた紙を見せる。 確かにそこにシゲトの名前があった。 「……シゲト、本気でお前一人でか?少々不安だな」 「そうそう、お前一人じゃ大したことも出来ないだろ。諦めて帰れ」 大尉と少尉が交互にシゲトと呼ばれた少年を冷やかす。 「何だよ!俺達だってリヴァイブの立派なメンバーだぞ!見張りぐらいどおって事ねえよ!」 茶化された少年はぷいっっと膨れっ面で反論した。 「俺達?」 少尉が怪訝な顔をする。 なんとシゲトの腕にはあの時計”AIレイ”があった。 《そういう事だ。一切問題ない、俺も一緒だからな》 「なんだレイ。お前もいたのかよ。そうならそうと早く言えよな」 《最初からシゲトは『俺達』と言っていた筈だが?》 正論にぐっと少尉は喉を詰まらせる。 「ま、レイが一緒ならシゲトでも大丈夫だな」 「でもってなんだよ!でもって!」 シゲトが抗議するが大尉はあっさりと無視した。 「行こうか、少尉、中尉。いい加減にしないとセンセイも怒り出しそうだしな」 「了解です、大尉」 「じゃ、ソラちゃん。また後で会おうね~」 来たときと同様、三人は唐突に去っていった。 大尉と少尉が暴れだした辺りから圧倒されっぱなしだったソラがやっと一息つく。 「なんていうか……凄い人達ですね」 「でもああ見えてそれほど悪い人達じゃないわ。意外に紳士的な所もあるのよ」 「そ、そうなんですか」 とはいうものの、野次馬根性よろしくドタバタと騒いでいった大尉達三人と、センセイのいう”紳士的”という言葉がどうにもかみ合わない。そんな取り留めの無い事を考えていたソラは、ふと気づく。 「……あ、そういえば」 「どうしたの?」 「私、あの人達の名前ちゃんと聞いてませんでした」 「言ってたじゃない。『大尉』『中尉』『少尉』だって」 「え、でも……」 それは名前じゃなくて階級だ。それぐらいはソラにも分かる。ところがセンセイはソラに思わぬ事実を告げる。 「ここではいろんな過去を持っている人がいるわ。だから中にはいろんな事情から、本名を名乗れないで偽名を使ってる人もいるの。あの三人も同じ。だから私みたいに通り名ですましてるわ。本当の名前はあるでしょう。でもね、戦いが終わるまでそれは封印されたままなのよ」 「……ここが戦場だからですか?」 「んー、半分だけ正解かしら。確かに私達がレジシタンスという事も理由のひとつね」 「あとの半分は何なんです?」 「それはね、ヒ・ミ・ツ」 センセイは笑ってそう答えるが、ソラの胸中は複雑な思いで満たされる。 戦場という世界は人が人として普通に生きる事すら、制限してしまうのか。 そういう現実を垣間見た気がした。 「さてお喋りはもうお終い。私もそろそろ自分の仕事場に戻らないといけないから。じゃあまた後でね、ソラさん」 立ち上がり、部屋から出て行こうとするセンセイは、すれ違いざまに微笑みながらシゲトにそっと囁く。 「変な気を起こさないようにね?シゲト君」 「なッ!!?」 《問題ない、俺もいるからな》 「確かにレイがついているなら安心だわ。後はよろしくね」 手をヒラヒラと振りながら去っていったセンセイをシゲトは苦い顔で見送った後、つけていた腕時計を外してソラに突きつける。 「これ」 「えっと?」 AIレイだった。 「シンからだよ。レイなら側にいてもそれほど気にならないし話し相手が居た方がいいだろ?オレは外にいるから何か用があったら呼んで」 《まあそういう事だ》 ぶっきらぼうに言うシゲトから、少し戸惑いながらソラは受け取る。 再びソラの手元に戻ったAIレイは相変わらず愛想の欠片もなかった。 「あ、あの……」 「俺の名前はシゲト。シゲト=ナラ。シゲトでいいよ。大尉達みたいに偽名とかじゃないぞ!ちゃんとした本名だからな!」 「……」 ぎこちなく自己紹介をするシゲトの様子が、なんだが微笑ましかった。 なんとなく気持ちがほぐれてくる。 「うん、ありがとう……。シゲト君」 「い、いや!き、気にしないでいいよ!」 「私はソラ。ソラ=ヒダカ。シゲト君と同じ、れっきとした本名だよ」 「ソラさんか……!き、綺麗ないい名前だね!」 「うん、ありがとう」 「ソ、ソラさん!じゃ、また今度!」」 顔を真っ赤にしてシゲトはそれだけ言うと部屋の外に飛び出して行く。 《おい、シゲト。ドアの鍵を閉め忘れてるぞ》 「あああ、そ、そうだった!?」 真っ赤な顔をさらに赤くして戻ったシゲトは勢いよくドアを閉め、ガチャリと鍵をかけると、そのままバタバタと走り去っていってしまった。 部屋の中にははソラとAIレイだけが、ポツンと残された。 「どうしたんだろ?なんか慌ててたみたいだけど」 《リヴァイブにはいなから同世代の異性と接触した経験があまりシゲトにはない。どう接すればいいのかよくわからないのだろう。そのうち慣れる。気にするな》 「そうなんですか……シゲトくんは普通の男の子に見えるし、なんでレジスタンスなんてやってるんだろう。シゲトくんだけじゃない。センセイだって。それにさっきの大尉さん達なんてモビルスーツのパイロットなんでしょう?てっきりもっと怖い人たちかと思ってたのに。本当になんでレジスタンスなんて……」 《そうだな、そう思うのも当然だろう。そう思うことが本来は正しい。皆も口には出さずともそう思っているだろう》 「それが正しいと思うのならなんでレジスタンスを?」 《……『正しい』というだけでは通じないことがこの世には多すぎる。俺の口からはこれ以上は言えない》 レイの答えはソラを深い疑問の渦へと誘う。 (『正しい』というだけでは通じない……じゃ『正しい』って何だろう?) その頃、東ユーラシア共和国軍サムクァイエット基地司令室。 先ほど共和国政府国防省から送られてきた通達に、司令ドリュー=ガリウスは色を失っていた。 「これは一体……!なんだと……!!」 衝撃にうち震える手に握られた指令通達書。 それにはこう書かれていた ――失態がこれ以上続くなら、治安警察からの出向指揮官にコーカサス方面軍の全権を委ねる、と。 つまりこれはガリウスへの降格に等しい処分なのだ。 先日のレジスタンス討伐失敗が治安警察の面子を潰したのだろう。 そのため業を煮やした彼らが直接介入に踏み切ったのだ。 もはやガリウスには選択肢はなかった。 「至急ここに少佐を呼べ!大至急だ!」 ガリウス司令は隣室に控えていた秘書官を怒鳴りつけ、即刻副官を呼ぶよう厳命した。 もはや手段や多少の損害に拘っている場合ではない。 そして数時間後、ひとつの作戦が決定する。 補給部隊を囮にしてリヴァイブをおびき出し――叩く、と。
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再びリヴァイブ基地に連れ帰られたソラは、基地の一室で保護されていた。 他に誰もいない部屋の中、粗末なベッドの上にソラは膝を抱えて座っている。 頭の中はずっと昨日の出来事で一杯だった。 凄まじい爆音と閃光。 鉄のひしゃげる嫌な音と圧倒的な破砕音。 巨大な鋼鉄同士のぶつかり合い。 その全てが幻想とすら思えるほどの、しかし決して夢でも幻でもない現実。 「あれが、戦争……なんだ……」 ソラはモビルスーツを今まで見たことがないわけでない。 むしろ治安警察やラクス=クライン親衛隊のピースガーディアンなど、平和を守る力の象徴として日常的に、とまでいわないまでもTVや式典などで見かけることは度々あった。 その巨大さと力強さに、頼もしさすら覚えたほどだ。統一連合主席カガリ=ユラ=アスハの操る、金色の守護神アカツキなど特に。だが昨日見たその光景は、今までの評価を180度変えるに足るものだった。 「怖い……怖いよ……」 膝を抱える手が震える。ソラはそうしていれば恐怖から逃れられるかのように、より強く膝を抱えた。 「こうなっちゃうと、もうオーブに帰せるのはいつになるか……。いや、もしかしたらもう二度と帰せないかも知れないな。本当に困ったよ」 自室になっている書斎のソファーに深く腰を沈めながら、ロマはやや大仰にため息をついた。 向かいには艶やかな亜麻色の髪をした白衣の美しい女性が座っている。 年の頃はおそらく20代後半だろうか。 銀縁の眼鏡の奥にある視線は、ロマとは対照的に物静かで知的な印象を漂わせる。 「でも全ての可能性が絶たれたわけではないでしょう?リーダー」 「まあね。交渉ルートはいくつかあるからそっちに働きかけてみるけど、それでも時間がかかるだろう。問題は……」 「あの子がここで生活していけるかですね」 「そういう事だよ。センセイ」 普段ロマはほとんどのメンバーに対して弱音を吐くことがない。 その例外の一人が今、彼の目の前にいる女性、通称『センセイ』だ。 彼女はレジスタンス組織リヴァイブの医療を一手に引き受ける軍医である。 職業柄に加えその美貌と落ち着いた物腰で、リヴァイブ内での人気や信頼度は高い。 だがその一方、彼女の経歴は誰も知らない。 それどころか、本名すら明かされていないのだ。 しかしメンバー誰もそれを疑問にも思わない。 そんな例は他にもあるから。 だから皆、愛着と信頼を込めて彼女の事を『センセイ』と呼んでいる。 それはロマも変わらない。 彼は腕組みをし、センセイに話を続ける。 「放り出すわけにもいかないし、当分は監視付で軟禁状態にするしかないかな?いっそオーブに帰ることを諦めてくれたら楽なんだけどね」 「はっきり言ってそれは現状では有り得ないですね」 「そうなんだよね。……しょうがない、当分軟禁生活で我慢してもらおう」 「わかりました。では一応は本人に訊ねておきますわ」 「軟禁か帰るのを諦めるか、どちらにするかをかい?」 「選択肢が全くないのと自分で選んだ結論とでは、全然違いますもの」 「僕たちってずるい大人だよね……」 無言でセンセイをしばらく見つめた後、ユウナは言った。 「すまない。嫌な役をやらせる」 「いえ、お気になさらずに。では失礼します」 そう言ってセンセイが去って行った部屋に、もう一度だけロマのため息がこぼれたのだった。 ロマの自室を出た後、センセイはソラのいる部屋に向う。 彼女の部屋は前の大戦で連合がこの基地を使っていた時、士官用個室として使われていたものだ。 粗末だがベットはもちろん、簡単な洗面台はもちろんエアコンなども整っている。 シン達がすし詰めにされている大部屋より遥かにいい待遇だ。 しかしその部屋のドアの前には、若い青年兵が腕を組んで見張りに立っていて、それが今のソラの状況を如実に示していた。 「見張り、ご苦労様」 「おや、センセイ。どうかしましたか?」 「ちょっとリーダーに頼まれてソラさんにお話を、ね。何か変わったことは?」 「静かなものです。静か過ぎて、少し心配な位です」 見張りの青年に「そう、分かったわ」と声をかけると、センセイはコンコンと軽くドアをノックした。 「ソラさん?ちょっといいかしら?あなたに是非話したい事があるの」 返事は無い。 「ソラさん?寝てるの?」 再び問いかけてから、ドアをノックする。 しかしまたもや返事はない。仕方がないのでドアを開ける事にした。 もしかして何かしているのかもしれない。あるいは……。 青年に何があっても対処できるように、目配せをする。 彼もそれを理解し、小さく頷いた。 「ソラさん、開けるわよ。いいわね」 そう言ってセンセイはドアの鍵を開ける。 部屋の中には小さな机と洗面台、そしてベットがあった。 ソラはそのベットの隅っこにじっと座っている。 「ソラさん?なんだ、起きてる……」 しかし最後まで言うまでもなく、センセイはソラの異常に気付く。 普通は部屋の中に誰かが入れば多少はそちらを注目するものだが、今のソラは完璧に無反応だった。 視線が空に浮いているのが、遠目にも分かる。一種のショック状態だ。 医者である彼女には、こうなった理由はすぐに分かった。 (何も知らない年頃の女の子が、いきなりモビルスーツ同士の戦闘を間近で見たんだもの。こうもなるわね) そっと隣に座るが、それでもソラは何の反応も示さない。 するとセンセイはそんな彼女を、後ろからそっと包み込むように抱きしめる。 その途端、今まで無反応だったソラが突如暴れだした。 「いやぁっ!放して……放してぇ!!」 「……」 暴れるままにセンセイの腕や足など、手の届く範囲を殴打し、引っ掻く。 しかしセンセイは無言のままギュっと抱きしめ続けた。 「帰して……家に……、オーブに帰してぇ……」 叫び声に涙が混じり始めた頃、落ち着いたというより暴れることに疲れたせいか、やっとソラは静かになった。 だがやはりセンセイは無言のまま抱きしめ続ける。 白衣越しに緩やかなセンセイの温もりがソラに伝わり、その穏やかさに少しずつソラの心に平静さが戻ってくる。 「大丈夫……。大丈夫だから……」 じっとソラを抱きしめて、静かになだめ続ける。 しばらくするとソラの瞳に生気が戻ってきた。 それを見極めると、センセイはそっとソラを離す。 「……少しは落ち着いたかしら?」 「……」 ソラは何も言わない。 しかしさっきまで荒かった息が、今は静かだ。 やっと落ち着いたらしい。 するとセンセイはそっとソラを離し、今度は正面から彼女を見据えた。 「……謝っても許されることじゃないけど、ごめんなさい」 初めて見る見知らぬ白衣の女性に謝られて、それまで黙っていたソラもたどたどしく問いかけた。 「……あの……あなたは?」 まだ少し戸惑っているソラを刺激しないように、センセイはゆっくりとした口調で自己紹介をした。 「……初めてお会いするわね。私はこの基地に勤めてる医者で、皆から『センセイ』って呼ばれてるわ。よろしくね」 「……センセイ?それ……名前なんですか?」 「訳あって匿名希望なのよ。でも名無しの権兵じゃ何だから『センセイ』ってワケ。医者だし、いつもこんな格好だからおあつらえ向きね」 そういってセンセイは白衣を摘んで見せてみる。 ソラはクスッと少しだけ笑った。 センセイからはコニールやシン達の様などこかギラギラした雰囲気はしない。 彼女の落ち着いた余裕がソラにそう感じさせていたのかもしれない。 それまであった彼女の警戒心が和らいだのがセンセイにも分かった。 そしてセンセイはさっきまでとは違う真摯な表情で告げる。 「ソラさん。私達はあなたには謝らなければいけないわね。あなたを巻き込んでしまった上に、また基地に戻す事になってしまって。どんなに謝っても許されることじゃないのはわかっているわ。でも、本当にごめんなさいね」 そういうとセンセイは深く頭を下げる。 「なるべく早くオーブに帰してあげたかったんだけど、現状では難しくなった、というのはわかるわね」 「……はい」 一言返事をした後は、しっかりとセンセイの目を見て話を聞いている。 「そこでこれからどうするか、あなたにも決断してもらわないといけないの。これはとても大事な事なのよ。あなたには二つの選択肢があるわ。どちらも辛いでしょうけど、ここではっきりと選んでちょうだい」 「……」 ソラは何も言わない。 そこでセンセイは一拍置いてゆっくりとソラに語りかけた。 「一つは、あなたがオーブ帰ることを諦めること。住居は提供するし、生活費もあなたが成人するか、リヴァイブが瓦解するまでは保障します」 「そんな!帰るのを諦めるなんて!!」 「でしょうね。では、あなたにはもう一つの選択肢を選んでもらうしかないわ。あなたをオーブに帰すことができるまで、この基地内で軟禁状態になる、という選択肢を」 「軟禁、状態?」 「そう、軟禁。つまり戦争が終わるか、あなたがオーブに帰れるようになるまで、どこか一室にずっと閉じこもったままでいてもらうの。戦争において相手の情報はとても大事だわ。あなたがリヴァイブについて知れば知るほど、あなたをオーブに帰した時の私達のリスクが増える。だから本当にオーブに帰りたいのなら、あなたはルールを守って欲しいの。それは私達”リヴァイブ”について知ろうとしないこと」 「だから私を軟禁、ですか」 一度頷いてからセンセイは続ける。 「繰り返すけどごめんなさい、あなたには、この二つのどちらかを選んでもらうしかないの。不条理と思うでしょうけど、これが戦争をしている私たちができる、ギリギリの譲歩なのよ」 「そうですよね……。戦争、してるんですもんね」 それだけ呟くと再びソラは無言になる。 僅かな呼吸音だけが部屋を満たす。 「それでも、やっぱりオーブに帰してください。お願いします」 「わかったわ。リーダーには、そう伝えておきます」 小声だがしっかりと答えたソラに、センセイは頷きながら言葉を返す。 そんなセンセイの二の腕に少しだが引っかき傷があるのにソラは気付いた。 「あ、あの!その腕の傷……ごめんなさい、私がつけた傷ですよね」 「あら?女の身体を傷物にしたのよ?言葉だけで許してもらえると思ってるの?」 「え?」 素直に戸惑うソラにセンセイは忍び笑いを漏らす。 「うふふ、冗談よ。レジスタンスやっているんですもの、こんなのは傷のうちにも入らないわ」 「酷い。からかったんですね」 ほんの少しだが、初めて笑みらしいものを見せた。 そしてソラは微笑むセンセイを見て、前から疑問に思っていたことを意を決して訊ねた。 「……センセイはなんでレジスタンスなんてしているんですか?それに匿名希望って……」 「あら、また随分と直球ね。でもね、秘密は大人の女のアクセサリーよ。そう簡単に教えるわけには、ね?」 「……」 はぐらかす様に冗談めかして答えるセンセイだったが、ソラの真剣な眼差しに折れてしまう。 「ふう……。仕方ないわね。秘密にすると約束してくれるなら、少しだけ教えてあげるわ」 頷くソラをを見てセンセイは口を開く。 「私はね……」 「ここかい?シンが馬鹿やって攫ってきたっていう女の子の部屋は!」 二人の邪魔をするドヤトヤと騒がしい声。 センセイが肝心なことを話す前に、それは突如部屋に乱入してきた屈強そうな男達に遮られた。 「……仮にも女の子の部屋よ?ノックくらいしたらどうなの?」 呆れたように問うセンセイに、先ほど大声を上げながら入ってきた赤いメッシュの入った金髪が特徴の男が答えた。 「そんな硬いこと言うなって。あ、君が噂の子だね。う~ん。五年後くらいが楽しみだ。俺のことは気軽に『少尉さん』って呼んでくれ。よろしく!」 「は、はぁ……よろしくお願いします」 そういうと男はいきなり右手を差し出さしてきた。 相手の気迫と陽気な笑みに押し切られて、ソラは思わず握手してしまう。 「君、名前は?」 「ソ、ソラ=ヒダカといいます……」 「ソラちゃんかあ。爽やかないい名前だね~。しかしシンの馬鹿に巻き込まれるなんて大変だったね。ソラちゃん、その胸の悲しみを僕に、どうぞ打ち明けたまえ」 両手を広げて「飛び込んでおいで」と暑苦しい位爽やかな笑みを浮かべる少尉の顎に拳が叩き込まれた。 ガツン!と鈍い音が響く。 「そういう俺達の品位を疑われるようなことはするな、とあれほど言った筈だが?」 「いっつー!いきなり何すんですか大尉!俺は言われたとおり紳士的に振舞ってるじゃないです……くわ!?」 顎を押さえてしゃがみ込んだ少尉の頭に、黒い拳が目掛けて落ちていた。 悶絶している少尉の後ろから、ぬっと煙草を咥えた色の黒い大男が現れる。 見慣れない風体にソラは思わずぎょっとする。 「ソラさん……、だったな?こいつの女好きは病気なんだ。どうか許してやって欲しい。私の事は大尉と呼んでくれ」 「ど、どうも……。あの……私気にしてませんから……」 大尉と名乗った黒人男性はすっと手を差し出す。 ソラはおっかなびっくり握り返すが、固い掌からこの人も戦場を潜り抜けてきた人なんだと、漠然と感じた。 先ほどの少尉と名乗った男も筋肉質な体型だったが、大尉はそれとは比べ物にならないほどごつい体つきをしている。 少尉よりも低い身長も合わさって遠目に見たら、少々肥満体にすら見えるほど発達した筋肉をしている。 ただその容姿とオーブではあまり見かけない黒人ということもあってソラは、大尉の丁寧な謝罪と挨拶にも関わらず少し怯えていた。 「大尉~、ソラちゃんが怯えてるじゃないっすか。大体女の子を慰めるのなんて大尉のキャラにはあってないんすからやっぱりここは俺が」 「どうしてももう一発欲しいようだな、ああん!?」 握り拳を作って少尉に迫る大尉。 そんな二人の後ろから無表情、というには僅かながら眉を寄せた顔付きで男が入ってくる。 「何やってんですか、二人とも。彼女すっかり怯えていますよ」 「や、そうだったか。スマンな中尉。気づかなかった」 「だから俺がさっきから……」 もう一発少尉の頭にゲンコツが飛んだ。 中尉と呼ばれた第三の男。 ソラのこの男の第一印象は「細い」だった。 しかしそれは少尉より頭半分ほど高い身長によって全体像として細く見えるだけで、腕の太さなど局部だけを見ればやはり強靭そうな筋肉に覆われていた。 「申し訳ありません、センセイ。止めようとはしたのですが二人がかりでは流石に不可能でした」 「……気にしないで、大体の事情は察しがつくから」 入り口付近で大声で騒ぐ大尉と少尉の二人にちらりと目をやる。 「いつもの事ってことなのよね」 センセイはふうっとため息をついた。 通称『大尉』、『中尉』、『少尉』。 この三人は貴重なモビルスーツのパイロットであり、皆の信頼を集めるリヴァイブの中核メンバー達である。 しかしその反面プライベートにおける行動はあまり評判はよろしくない。 決して悪い人間ではないのだが少尉は事あるごとに女性にちょっかいを出すし、大尉は”面白そう”という理由だけで結構突飛な行動をすることもしばしば。 中尉が二人を抑えに入るが大抵押し切られてしまう……というのが何時もの流れだった。 ただセンセイの立場から言えば呆れる事ばかりだし、もう少し自重してくれると助かる、とも思っている。 ちなみに中尉は三人の中では紳士然とした抜きん出た常識人で、センセイも彼をとてもく信頼している。 ただもう少し二人への抑えが効けば嬉しい、と密かにさらなる期待をしているのは秘密だ。 もっともそれは無理な話なのだが。 「……三人とももう挨拶も済んだんだし満足でしょう?モビルスーツのパイロットは休むのも仕事のうちなんだから。あんまりふらふら出歩いてないで自室に戻ったらどうなのよ」 「甘いぜ、センセイ。俺達は三人一組だぜ?三位一体、一蓮托生!俺達三人で見張りに立てばバッチリでしょ!!」 「中尉……」 「申し訳ありません。そういうわけでして……」 「大尉……」 「このバカを一人でここに置けと?狼の前に何とやらですよ、センセイ」 「……」 少尉にヘッドロックをかけたまま大尉は断言する。 センセイは思わず軽い頭痛を覚えた。 すると入り口の向こうから、それまで見張りをしていた青年が途方に暮れた様に聞いてくる。 「あのー、私は?」 「お前はとっとと休憩に入れ!交代だ、交代!」 シッシッと少尉は青年を追い払おうとする。 ところが不意にひょっこりと青年の横から小ぶりな男の子が現れた。 「駄目だよー。ここからは俺の見張り番だから」 「シ、シゲト!?」 「へっへー、ここの見張り番はオイラの役目に回ってきたのさ、で、ちょうど今が見張りの交代時間ってわけ」 短く刈った茶髪とニンマリと笑う笑顔。 典型的なわんぱく坊主といった感じだ。 と言っても既に女の子一人に女性一人、さらにごつい男が三人も居る部屋は満杯の状態で部屋の入り口に立った、の方が正しい表現だが。 「見張りって誰の命令だよ」 「リーダーだよ。ほら、交代のスケジュール表にもちゃんと書いてる」 そういうとシゲトと呼ばれた少年は大尉達に交代要員の一覧が書かれた紙を見せる。 確かにそこにシゲトの名前があった。 「……シゲト、本気でお前一人でか?少々不安だな」 「そうそう、お前一人じゃ大したことも出来ないだろ。諦めて帰れ」 大尉と少尉が交互にシゲトと呼ばれた少年を冷やかす。 「何だよ!俺達だってリヴァイブの立派なメンバーだぞ!見張りぐらいどおって事ねえよ!」 茶化された少年はぷいっっと膨れっ面で反論した。 「俺達?」 少尉が怪訝な顔をする。 なんとシゲトの腕にはあの時計”AIレイ”があった。 《そういう事だ。一切問題ない、俺も一緒だからな》 「なんだレイ。お前もいたのかよ。そうならそうと早く言えよな」 《最初からシゲトは『俺達』と言っていた筈だが?》 正論にぐっと少尉は喉を詰まらせる。 「ま、レイが一緒ならシゲトでも大丈夫だな」 「でもってなんだよ!でもって!」 シゲトが抗議するが大尉はあっさりと無視した。 「行こうか、少尉、中尉。いい加減にしないとセンセイも怒り出しそうだしな」 「了解です、大尉」 「じゃ、ソラちゃん。また後で会おうね~」 来たときと同様、三人は唐突に去っていった。 大尉と少尉が暴れだした辺りから圧倒されっぱなしだったソラがやっと一息つく。 「なんていうか……凄い人達ですね」 「でもああ見えてそれほど悪い人達じゃないわ。意外に紳士的な所もあるのよ」 「そ、そうなんですか」 とはいうものの、野次馬根性よろしくドタバタと騒いでいった大尉達三人と、センセイのいう”紳士的”という言葉がどうにもかみ合わない。そんな取り留めの無い事を考えていたソラは、ふと気づく。 「……あ、そういえば」 「どうしたの?」 「私、あの人達の名前ちゃんと聞いてませんでした」 「言ってたじゃない。『大尉』『中尉』『少尉』だって」 「え、でも……」 それは名前じゃなくて階級だ。それぐらいはソラにも分かる。ところがセンセイはソラに思わぬ事実を告げる。 「ここではいろんな過去を持っている人がいるわ。だから中にはいろんな事情から、本名を名乗れないで偽名を使ってる人もいるの。あの三人も同じ。だから私みたいに通り名ですましてるわ。本当の名前はあるでしょう。でもね、戦いが終わるまでそれは封印されたままなのよ」 「……ここが戦場だからですか?」 「んー、半分だけ正解かしら。確かに私達がレジシタンスという事も理由のひとつね」 「あとの半分は何なんです?」 「それはね、ヒ・ミ・ツ」 センセイは笑ってそう答えるが、ソラの胸中は複雑な思いで満たされる。 戦場という世界は人が人として普通に生きる事すら、制限してしまうのか。 そういう現実を垣間見た気がした。 「さてお喋りはもうお終い。私もそろそろ自分の仕事場に戻らないといけないから。じゃあまた後でね、ソラさん」 立ち上がり、部屋から出て行こうとするセンセイは、すれ違いざまに微笑みながらシゲトにそっと囁く。 「変な気を起こさないようにね?シゲト君」 「なッ!!?」 《問題ない、俺もいるからな》 「確かにレイがついているなら安心だわ。後はよろしくね」 手をヒラヒラと振りながら去っていったセンセイをシゲトは苦い顔で見送った後、つけていた腕時計を外してソラに突きつける。 「これ」 「えっと?」 AIレイだった。 「シンからだよ。レイなら側にいてもそれほど気にならないし話し相手が居た方がいいだろ?オレは外にいるから何か用があったら呼んで」 《まあそういう事だ》 ぶっきらぼうに言うシゲトから、少し戸惑いながらソラは受け取る。 再びソラの手元に戻ったAIレイは相変わらず愛想の欠片もなかった。 「あ、あの……」 「俺の名前はシゲト。シゲト=ナラ。シゲトでいいよ。大尉達みたいに偽名とかじゃないぞ!ちゃんとした本名だからな!」 「……」 ぎこちなく自己紹介をするシゲトの様子が、なんだが微笑ましかった。 なんとなく気持ちがほぐれてくる。 「うん、ありがとう……。シゲト君」 「い、いや!き、気にしないでいいよ!」 「私はソラ。ソラ=ヒダカ。シゲト君と同じ、れっきとした本名だよ」 「ソラさんか……!き、綺麗ないい名前だね!」 「うん、ありがとう」 「ソ、ソラさん!じゃ、また今度!」」 顔を真っ赤にしてシゲトはそれだけ言うと部屋の外に飛び出して行く。 《おい、シゲト。ドアの鍵を閉め忘れてるぞ》 「あああ、そ、そうだった!?」 真っ赤な顔をさらに赤くして戻ったシゲトは勢いよくドアを閉め、ガチャリと鍵をかけると、そのままバタバタと走り去っていってしまった。 部屋の中にははソラとAIレイだけが、ポツンと残された。 「どうしたんだろ?なんか慌ててたみたいだけど」 《リヴァイブにはいなから同世代の異性と接触した経験があまりシゲトにはない。どう接すればいいのかよくわからないのだろう。そのうち慣れる。気にするな》 「そうなんですか……シゲトくんは普通の男の子に見えるし、なんでレジスタンスなんてやってるんだろう。シゲトくんだけじゃない。センセイだって。それにさっきの大尉さん達なんてモビルスーツのパイロットなんでしょう?てっきりもっと怖い人たちかと思ってたのに。本当になんでレジスタンスなんて……」 《そうだな、そう思うのも当然だろう。そう思うことが本来は正しい。皆も口には出さずともそう思っているだろう》 「それが正しいと思うのならなんでレジスタンスを?」 《……『正しい』というだけでは通じないことがこの世には多すぎる。俺の口からはこれ以上は言えない》 レイの答えはソラを深い疑問の渦へと誘う。 (『正しい』というだけでは通じない……じゃ『正しい』って何だろう?) その頃、東ユーラシア共和国軍サムクァイエット基地司令室。 先ほど共和国政府国防省から送られてきた通達に、司令ドリュー=ガリウスは色を失っていた。 「これは一体……!なんだと……!!」 衝撃にうち震える手に握られた指令通達書。 それにはこう書かれていた ――失態がこれ以上続くなら、治安警察からの出向指揮官にコーカサス方面軍の全権を委ねる、と。 つまりこれはガリウスへの降格に等しい処分なのだ。 先日のレジスタンス討伐失敗が治安警察の面子を潰したのだろう。 そのため業を煮やした彼らが直接介入に踏み切ったのだ。 もはやガリウスには選択肢はなかった。 「至急ここに少佐を呼べ!大至急だ!」 ガリウス司令は隣室に控えていた秘書官を怒鳴りつけ、即刻副官を呼ぶよう厳命した。 もはや手段や多少の損害に拘っている場合ではない。 そして数時間後、ひとつの作戦が決定する。 補給部隊を囮にしてリヴァイブをおびき出し――叩く、と。
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このページはこちらに移転しました 嗚呼餡 作詞/601スレ388 あん あん あん あん あん あ あん あん あん あん あん あん あ あん 粒餡 漉し餡 晒し餡 おっとまだある潰し餡 みんなの お好み 何ですか 自分は気分で浮気する 白餡 ずんだ 緑豆餡 おっとまだある鶯餡 みんなの お好み どれですか 自分は気分で味わうよ 葛餡 芋餡 カボチャ餡 おっとまだある 栗餡 みんなの お好み ありますか 自分は気分でよそ見する ゴマ餡 柚子餡 抹茶餡 味噌餡 黄身餡 梅肉餡 柿餡 いちご(餡) バナナ餡 棗(餡) 胡桃(餡) 冬瓜餡 蓮の実(餡) レモン(餡) ピーナッツ餡 チョコ餡 ミルク(餡) コーヒー餡 見ているだけで腹いっぱい 自分はそろそろ逃げますね (棗=ナツメ、胡桃=くるみ、冬瓜=とうがん)
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このページはこちらに移転しました 嗚呼、異臭 作詞/393スレ501 麦茶の悪い部分のにおいがするールールールールー 消臭してくれ 擦るとメロンの香りがする雑誌のにおいがするールールールールー 消臭してくれ 雨上がりの街の憎しみを凝縮したような下水のにおいがするールールールールー 消臭してくれ
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/52272.html
【検索用 ああきみはみあ 登録タグ TakoyakiKZY VOCALOID koya shu (此処は、ワンダーランド) tom あ はじめま カタヲカ ニコニコ外公開曲 初音ミク 曲 曲あ 森雅人】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:shu (此処は、ワンダーランド) 作曲:shu (此処は、ワンダーランド) 編曲:此処は、ワンダーランド × TakoyakiKZY Rec Mix:koya(Twitter) Mastering:森雅人(Twitter) Illustration:カタヲカ(Twitter) Movie:tom(Twitter) Special thanks!:はじめま(Twitter) 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『嗚呼、君はミア』(ああ、きみはみあ) 初音ミクのコラボレーションストア「39Culture」2023年テーマソング。 此処は、ワンダーランドのYouTubeチャンネルでは此処は、ワンダーランド版の動画が公開されている。 歌詞 (此処は、ワンダーランド版の動画説明欄より転載) 輪廻円周率… 詰まんないようだこんな生き方では やっぱり案外苦しいほうがマシなんだ 包まった想いはこの感情を越して 広い銀河で宙をうだる 「しまった!」まんまと死に生き 転生繰り返してからも嗚呼 来世に託してしまってる間に余命時期 またも人間が希望か? 子丑寅卯辰巳その他より僕になる いつも罰点がつく不安定ライフ 君の涙の中のモールス信号 愛はすでに分かっていた 君は嗚呼ミア…嗚呼ミア… 輪廻円周率… 分かんなそうだこんな暇潰しは やっぱり案外圧迫感が必要さ 鳴き出した産声はその肉親を越して 長い宇宙の一部となる 「わかった!」定めをやはり運命と知った 絡まり回るスパイスに笑う 必然か偶然かそれら概念的楽観視 ねぇもうやめにしようこんなの もはや形猿? ウキッ さよなら言えないようだ こんな気持ちくしゃくしゃにして 意味がないのに抱きしめたい こんな気持ち有耶無耶に蹴って攫う 三角印普遍的だ 僕の心の中の救難信号でも 愛はすでに分かっていた 君は嗚呼ミア…嗚呼ミア… いつも罰点がつく不安定ライフ 君の涙の中のモールス信号 愛はすでに分かっていた 君は嗚呼ミア…嗚呼ミア… やはり三点が付く残念だ だけど心の中は熱を帯びてく 愛はすでに分かっていた 君は嗚呼ミア…嗚呼ミア… 君はミア…ミア… コメント 名前 コメント
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頑固者;jicchokuの記事に関する某関係者の推察をご紹介します。 嗚呼、悲しいではないか! https //jicchoku.muragon.com/
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このページはこちらに移転しました 嗚呼、マサオ 作詞/音羽 携帯が 呼んでいる そんな気が したんです 二つ折り 開いたら 俺の嫁 笑ってた 閉じようとしたら着信キター! 知らない人から着信キター! 慌てて出るよ ボタンドコー! よし繋がった はいもしもし! 「マサオサン?コンヤハドウシマスカ?」 「マサオさん?」 「アナタマサオサンチガウマスカ?」 「違いますよ。番号をお間違えでは?」 「そうですか、これは大変失礼致しました」 プツッ。 あれれー日本語ペラペラやーん さっきのカタコトなんなんだー キャラ作りですかそうですかー マサオよ頑張れ 超頑張れー